脱炭素社会の実現 Sustainability

基本的な考え方

アパレル産業はCO₂排出量が非常に多い産業といわれています。地球温暖化は喫緊の課題であり、パリ協定で約束された1.5℃目標の達成にむけ積極的な対応が必要です。当社グループは、可能な限り少ない資源とエネルギーを利用した環境負荷を抑えた事業活動を通じて、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。今後は直営店での排出削減やサプライヤーとの連携強化による化石燃料に頼らない原材料の調達や製造工程の見直しなどとともに、カーボンニュートラル達成を目指していきます。


環境重要課題

当社グループではかねてより、主要事業所におけるエネルギー消費量の削減とCO₂の排出量削減に取り組んできました。これらの取り組みを一層進め、サプライチェーン全体でのCO₂削減に取り組むために、中期経営計画のなかで、重要課題の一つとして「脱炭素社会の実現」を設定しています。サプライヤーとの連携を強化し、化石燃料に頼らない原材料の調達とともに、カーボンニュートラル達成を目指しています。さらにパリ協定が目指す「産業革命前の水準から地球の気温上昇を1.5℃に抑える」という目標の実現のため、SBTi(Science Based Targets initiative)による目標の認定を取得し、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。

また、代表取締役社長が委員長を務める「EMS推進委員会」を中心に脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めています。EMS推進委員会事務局では事業所ごとの温室効果ガス排出量の実績を毎月管理し、排出量の削減に努めています。また、年2回開催される環境管理会議でも進捗が報告されます。

環境改善活動における戦略と具体策
環境改善活動における戦略と具体策の説明図

温室効果ガス排出量削減

当社グループは、継続して温室効果ガス排出量の削減を実施しています。2024年度における国内事業所からの温室効果ガス排出量は89t-CO₂、直営店からの排出量は2,810t-CO₂でした。
また、Scope1・2・3を含む総排出量は、前年度比で50,029t-CO₂の削減となり、212,835t-CO₂となりました。

今後は、これらの算定結果を踏まえ、排出量削減に向けた取り組みを一層強化してまいります。具体的には、当社が直接排出するScope1に加えて、直営店の再生可能エネルギーへの転換のほか非化石証書の活用などによりScope2の削減を進めます。また、製品におけるカーボンフットプリントの算定結果も参考にしながら削減のポイントを明確化していくと共に、温室効果ガス排出量の多くを占めるScope3のカテゴリ1の削減に向けて、CO₂排出量の少ない製品の開発やサプライヤーとの連携を強化していきます。

CO₂排出量推移(国内事業所および直営店)(t-CO₂)
2024年度温室効果ガス排出量(t-CO₂)
Scope 1・2・3 212,835
Scope1 286
Scope2 2,613
Scope3 209,936
 カテゴリ1 201,971
 カテゴリ3 739
 カテゴリ4 3,973
 カテゴリ5 49
 カテゴリ6 379
 カテゴリ7 882
 カテゴリ12 1,943
※ 算定対象は連結対象のうち、日本国内の親会社および子会社とし、海外子会社を除きました。

温室効果ガス(GHG)排出量の第三者検証の受審

当社は、算定した温室効果ガス(GHG)排出量の信頼性向上のため、SGSジャパン株式会社による第三者検証を受審し、その検証結果を公表しました。

今後も脱炭素社会の実現に向けてCO₂削減の取り組みを推進し、事業活動に伴う環境への影響を適切に把握・管理していきます。また、ステークホルダーの皆さまへ正しく分かりやすくお伝えするとともに、環境負荷低減に向けた取り組みを加速させていきます。


調達物流から排出された温室効果ガス

ゴールドウイングループでは、Scope3カテゴリー4に該当する輸送・配送に伴う温室効果ガス排出量の把握に取り組んでいます。
2024年度の調達活動で排出された2,832t-CO₂については、翌2025年度に排出枠クレジットを購入し、カーボンオフセットを実施しました。
また、輸送時の梱包材の再利用やモーダルシフトの推進など、脱炭素に繋がる施策にも積極的に取り組んでいます。今後も、排出量削減に向けた具体的な施策の検討・実行を継続してまいります。


製品におけるカーボンフットプリントの算定

当社グループでは、温室効果ガス排出量の大部分を占めるScope3のカテゴリ1(購入した製品・サービス)における削減を目的に、製品単位でのカーボンフットプリント算定に取り組んでいます。
2024年度は、環境省による「令和6年度 製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業」に参画し、当社のアウトドアウエアブランド「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」を代表する製品である「バルトロライトジャケット(2024年秋冬モデル)」のカーボンフットプリントを算定しました。
その結果、当製品では原材料調達段階の排出量が全体の約8割を占めることが明らかになり、特に生地をはじめとする素材段階での排出削減が重要な課題であると特定されました。
この知見を踏まえ、温室効果ガスの削減に向けた取り組みの一環として、2025年秋冬モデルの「バルトロライトジャケット」では表生地に再生ナイロンを採用。化石由来素材を使用した場合と比較し、素材から製造までの工程において約1.8kgのCO₂排出削減を実現しました。
今後も、サプライヤーとの連携をさらに強化し、原材料段階からの排出削減につながる施策を推進していきます。
また、カーボンフットプリントの算定対象を当社グループの幅広い製品へ拡大し、現状把握と削減対策の高度化を進めていきます。


対象製品の詳細

製品名
バルトロライトジャケット(ユニセックス)

サイズ
L

素材
<表地>表側:ナイロン100%、裏側:ePE
<裏地>ナイロン100%
<中わた>ダウン72%、レーヨン20%、フェザー8%

算定単位
1着

対象とする構成要素
製品本体、収納袋、ブランドネーム、品質ラベル、吊札、製品包装ポリ袋等

ジャケットの写真
バルトロライトジャケットの温室効果ガス排出量(kg-CO₂e)
原材料調達 25.0
生産 0.1
流通・販売 1.4
使用 1.8
廃棄 3.1
総量 31.4

エネルギー使用量の削減

当社グループは、継続してエネルギー使用量の削減に取り組んでいます。

2024年度の国内主要事業所の総エネルギー使用量は29,781GJであり、2023年度より4,766GJ削減されましたが、国内主要事業所と直営店を合わせた総エネルギー使用量は2,285GJと増加しました。直営店の電力およびショッピングモール内のテナント店の空調の動力として使用される都市ガスの使用量の増加が要因となります。また、公共交通機関の利用促進により、揮発油・軽油とも使用量が減少しました。2025年度も引き続き省エネルギーに努め、削減に取り組みます。

エネルギー使用量
単位 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
電力 千kWh 3,501 3,502 3,473 8,548 8,773
都市ガス 構内設備使用分 千㎥ 3.192 2.197 3.759 118.803 185.891
LPG 構内設備使用分 t 6.9 6.7 5.8 4.7 4.7
A重油 50.8 52.0 18.4 0 0
揮発油 自動車使用分 11.0 18.9 20.3 18.6 16.2
軽油 自動車使用分 0.980 0.862 4.492 3.571
総エネルギー 合計 GJ 37,765.5 37,979.9 36,372.2 82,310 84,595
※軽油の使用量は2021年度から計測しています。
※2023年度より直営店実績を含む
エネルギー使用量推移(GJ)

再生可能エネルギーへの転換

当社グループは、温室効果ガス排出量の削減のために、使用する電力を再生可能エネルギーに転換しています。この取り組みの一環として、富山地区の事業所においては太陽光パネルによる自家発電システムを導入しています。

2024年度は、事業活動の拡大や直営テナント店舗における空調使用の算定方法見直しにより、電力使用量は増加しました。
それでもなお、再生可能エネルギーの使用比率は前年より2.3ポイント増加し、59.3%に達するなど、転換は着実に進んでいます。
今後も、現状の可視化や算定方法の精緻化を図りつつ、再生可能エネルギーへの転換を継続的に推進してまいります。

電力使用量(kWh / %)
※国内主要事業所使用量(一部の事業所と店舗は除く)
※2023年度より直営店実績を含む

フロン類の適正管理

当社グループでは、空調機器に充填されているフロン類を、フロン排出抑制法に定められた基準に従い管理しています。2024年度はフロン類の漏洩は確認されませんでした。今後も法を順守し、フロン類の排出抑制に努めていきます。


今後の課題

2024年度は国内事業所での温室効果ガス排出量を計画値を上回って削減できました。電力調達を自社で選択できる直営店では、この強みを活かして順次再生可能エネルギーへ切り替えています。一方、テナント入居店舗ではオーナーの方針が大きく影響するため、再エネへの転換に向けてオーナーとの対話を深め、脱炭素化を共に推進してまいります。今後も排出量の精緻な把握に努めるとともに、中長期計画に基づき、事業所・直営店に加えサプライチェーン全体の排出量を可視化し、その削減を加速していきます。