品質管理 Sustainability
基本的な考え方
ゴールドウインでは、お客さまの役に立つ商品やサービスの価値創造を目指し、製品の安全確保と品質向上に努めています。設計から材料手配、生産、完成後の製品検査に至るまで、関連する法令を遵守し、「店頭起点」の発想でお客さまの声を製品づくりに反映しながら、ご満足いただける品質を追求します。「見えないものにこそ、真実の価値がある」という思いで、スポーツを楽しむ人の安心や快適性を守り、ときに競技のパフォーマンスさえも左右する製品を提供する責任を認識し、スポーツ基軸の高い品質実現を目指し続けます。
推進体制・責任者
品質保証部長を責任者とし、品質保証部が主管部門となってグループ全体の品質管理の取り組みを統括しています。品質保証部では運営ルールの策定や数値管理を行うほか、品質会議を毎月開催し、商品部・商品研究部・生産技術部・カスタマーサービスセンター、事業本部、内部監査室、テック・ラボとの連携を深めています。一方、品質に関するサプライヤーへの情報共有・依頼は商品部が担います。
各施策に関する経営層への報告は、代表取締役社長および取締役相談役が出席する調達本部・開発本部の合同月次会議の中で行っています。また、カスタマーサービスセンターに寄せられる品質へのクレーム情報は、経営層を含めて部長以上の全管理職にも随時配信されています。
品質管理体系
ゴールドウインでは、グループの品質基準を統一化した「製品品質基準」を独自に定め、サプライヤーにも理解・熟知いただいています。製品品質基準は、4つの規定「製品品質管理規定」「製品品質検査規定」「材料品質管理規定」「材料品質検査規程」から成り立ち、当社が扱う製品に適用されます。商品企画・生産準備・生産・出荷・受入の各プロセスにおいて、本規程に基づく確認・検査を行い、お客さまに高い品質を提供できる管理体系を整備しています。当社のゴールドウインサプライヤー行動規範のもと2023年度までに400社以上のパートナー工場に本規程への遵守をお願いしています。2023年度は「製品品質基準」の一部を改定し、管理項目を強化しています。さらに、製品の受入検査の対象範囲をグループ関係会社に拡大するために、サプライヤーとの連携強化に取り組んでいます。今後本格運用に向けて、取り組みを推進していく予定です。
規定名 | 規定に対する考え方 |
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製品品質管理規定 | 製品の品質管理の運用に関する規定(材料から生産工場の選定、製造時の品質および安全性の管理などものづくりの全般に対するルール。) |
製品品質検査規定 | 製品の品質検査に関する規定。製造時から出荷や納品時における検査実務に関するルール。 |
材料品質管理規定 | 材料の品質管理の運用に関する規定。材料の検査・検反や安全に関する運用全般に関するルール。 |
材料品質検査規程 | 基準に基づく材料の品質検査に関する規程。材料の外観検査および性能試験に関するルール。 |
製品の安全性について
当社では、「製品品質基準」において、安全に関する品質基準として以下の4つを定め、製品の安全管理を行っています。
安全に関する品質基準 | 基準に対する考え方 |
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1.「ゴールドウイン制限物質管理規程」 および関連する法規を遵守しなければならない。 | 法規厳守の上では、日本の法規だけでなく海外の規制も取り入れて安全な製品を提供することに努めています。 |
2.物理的・化学的等の要因により生じる皮膚刺激、および湿疹・かぶれの原因となるものは使用しない。 | 当社の製品がスポーツ・アウトドアウエアであるため、長時間の使用や汗や濡れた状態なども含め皮膚障害などが発生しやすい過酷な条件下での使用を考慮し、常に快適に使用していただくことが使命と考えています。 |
3.ハサミ・針・金属片等、人体に危害を及ぼすものが混入しない危険物管理を徹底する。 | ハサミ・針・金属片等の異物混入防止は、最も信頼的要求が高い部分であると考えており、混入がないよう徹底した管理が、当社の品質の向上にもつながっています。 |
4.子ども用衣料の安全性管理を徹底する。 | 子ども用衣料の安全性はメーカーとして当然のことですが、大人向けの製品よりも大きな事故につながるケースが多く、子ども用衣料特有の安全性管理の情報収集と認識・共有を徹底しています。 |
サプライヤー工場の品質管理強化
ゴールドウインでは、サプライヤー工場を訪問し、当社「製品品質基準」における技術指導や品質改善指導を行う品質会議を定期的に実施しています。2023年度には18工場に対し、合計56回の専門スタッフ派遣を行いました。サプライヤーとの品質会議はシーズン毎に実施し、受入検査での不良内容や営業不良返品での不良内容をデータと画像で共有し改善を求めています。また、生産技術の面では富山のマザー工場で新素材の加工方法の確認と開発を行っており、そのノウハウを生産工場へ指導・技術供与しています。サプライヤーからも難易度の高い素材については指導要請があるなど、細やかな連携を図っています。
また、海外生産比率が90%を超える現在、グローバルでの対応は特に重要性を増しています。海外の主力サプライヤー工場との定期的な品質会議を継続しており、2023年度には7社と合計12回を実施しました。サプライヤー工場と連携した品質管理強化により、お客さまに安心してご使用いただける製品を提供するとともに、サプライヤー各社と当社の相互の企業価値向上を目指しています。
さらに2023年度からは、サプライヤーにおけるCSR推進を広げていくために、品質会議の中で人権に関する監査を実施しました。現在は一部のサプライヤーでの実施となりますが、今後対象範囲を拡大していく計画です。
製品異常に対するリコール対応
ゴールドウインでは、製品異常による事故の発生・拡大の可能性を最小化するため、以下のようなリコールの対応をとっています。
- 販売中止および流通、店頭からの製品回収
- 消費者に対するリスクについての適切な情報提供
- 消費者の保有する製品の交換、改修(点検・修理等)又は引取り
製品異常や事故が認められた場合、全社で共有する「リコール処理手順」に基づき、当該事業部と品質保証部が連携のもと、お客さまへの被害を防ぐことを最優先に速やかに対応しています。
「リコール処理手順」概略
- 製品異常の報告を受けた担当者が、速やかに当該事業部に伝達
- 当該事業部による事実関係の把握、品質保証部への情報共有
- 「リコール判定ガイドライン」に基づくリコールの判定、重大事故の場合はリコール対策本部を設置
- リコールの実施/当該事業部が事前に準備を進めた上で、一斉に告知し、全社でリコール対応
- 回収状況のモニタリングとレポート作成
- 当該事業部と商品部が連携し、原因を究明、再発防止策を策定
- 処置結果と再発防止策の社内への公開
- 製品の回収率が100%となった時点でリコール終了
2023年度は、23件のリコールを実施しました。そのうち重大事故と認められるものはありませんでした。
品質管理に関する従業員教育
製品の高い品質を支えるのは従業員であるという認識のもと、当社では品質管理に関する従業員教育を継続的に行っています。調達担当者を中心に、職層に合わせたさまざまなプログラムを充実させています。
研修 | 対象 | 一人あたり研修時間(分) | 受講者(名) | 研修目的・内容 |
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品質表示の基礎知識(組成表示&取扱い表示について) | 商品本部従業員 | 40分(組成表示20分、取扱い表示20分) | のべ181名 (組成表示94名+取扱い表示87名) |
家庭用品品質表示法の繊維製品品質表示規程の基礎的な表示方法を説明 |
クレーム事例紹介および対応内容と関連する試験方法・基準の解釈 | 事業部・商品研究部従業員 | 60分 | 22名 | クレーム事例とそれに関連する試験方法・基準値の解釈を説明 |
製品品質基準の説明 | 商品本部従業員 | 20分 | 90名 | 品質基準およびゴールドウインの品質に対する考え方の説明 |
量産受入検査説明 | 商品本部従業員 | 30分 | 78名 | 品質基準書のフローチャートによるモノづくりの説明と受入検査の役割説明 |
海外販売製品の表示内容の説明 | 商品研究部・商品部・N/・ナナミカ従業員 | 各回60分 | のべ20名 (15名+2名+3名) |
海外販売製品における表示内容および関連資料の説明 |
キャリア採用者に対する品質管理研修 | 商品部・SV従業員 | 各回180分 | 計2名 (1名+1名) |
品質基準書のフローチャートに沿った品質管理手順の説明およびゴールドウインの品質に対する考え方の説明 |
機能性試験および基準 | テック・ラボ従業員 | 60分 | 5名 | 各機能性における試験方法をメカニズムと関連して説明 |
制限物質管理
当社グループでは、すべての製品において、お客さまと従業員の安全を守り、地球環境への負荷を低減するよう努めています。製品づくりにおいて不可欠な役割を担う化学物質の使用では、各プロセスで徹底した管理を行い、有害物質の混入を防いでいます。
グローバル対応を強化していくため、2021年4月には、欧州をはじめとする海外事業国の法令や規制を踏まえた「制限物質管理規定」を策定しました。これは、当社グループが取り扱うすべての製品と、それに使用される材料等を対象に、制限物質とその制限値を明らかにしたものです。当社に製品や資材を納品するサプライヤーに本規定の理解を求め、下請けの管理を含めた遵守を依頼し、サプライチェーンでの管理体制を敷いており、2023年度は428社のサプライヤーと「制限物質管理規定同意覚書」を締結しました。また、品質保証部では、定期的にサプライヤーによる制限物質の管理状況確認のため、第三者機関による抜き打ち検証試験を任意で実施し、万が一制限物質が検出された場合は是正勧告を行います。2023年度は60件の資材に対して、抜き打ちでの検証試験を実施いたしました。試験の結果、6件の資材から制限物質の検出を確認したため、是正勧告を実施するとともに、代替品への変更、改善品への再生産などの対応を行いました。
ゴールドウイン制限物質リスト(RSL)
以下のゴールドウイン制限物質リスト(RSL)は、当社および当社のグループ会社へ提供されるすべての製品および製品に使用される材料、部材、原材料に適用されます。自社内および自社サプライチェーンにおいてこのリストを共有し、ゴールドウイン制限物質管理規定およびRSL遵守のための管理・検証を適切に実施しています。
Ver2.0(2022年4月1日改定)のリストでは、310物質を規定しており、今後も社会や各国法規の動向を鑑み、適宜更新していく予定です。自社サプライチェーンにおいては、常に最新版を理解し、RSLに定める制限値およびその他の要件、製品に要求される各国の関連するすべての法規を遵守します。
責任ある製品表示・広告の取り組み
製品に関する正確な情報をお伝えすることは、お客さまにより良い商品・サービスを安心して購入いただくために欠かせません。当社グループでは関連する法令・規制を遵守し、誤認されることのない製品表示・広告を徹底しています。
特に、すべての製品に関わる景品表示法への対応では、各部署に表示管理者を設定して取り組んでいます。表示管理者に対しては、社内Eラーニングシステムによる動画での教育や個別の勉強会を開催しているほか、具体的な表現・用語について注意を喚起する「注意が必要な表示事例集」を品質保証部で作成の上、表示管理者に配布し、各部署での対外資料作成時のガイドラインとして使用しています。
遵守する関連法・規制
- 家庭用品品質表示法
- 景品表示法
- 薬機法
- 資源有効利用促進法
- 食品衛生法
- JIS規格
- JASPO(一般社団法人日本スポーツ用品工業協会)ガイドライン
- 環境省「環境表示ガイドライン」
今後の課題
「より高い品質」というゴールのない目標に向けて、当社グループでは今後も品質管理の取り組みを継続し、社会的責任を果たしていきます。安心・安全な製品の提供を通し、世界のお客さまから信頼される企業を目指し続けます。
事業のグローバル展開を進める中、品質管理においては、「グローバル展開拡大に対応した製品品質の確保」「サプライチェーンのCSR管理・制限物質管理強化」「企画・設計段階での品質管理の強化」の3点を重視した取り組みを進めていきます。また、クレーム・営業不良返品率の削減や、サプライチェーンにおける環境負荷低減などにも引き続き取り組んでいきます。
近年は、新商品・新素材の開発が進んでおり、従来の品質検査にプラスした当社独自のオリジナル試験も行うなど、日々、品質の追求を行っています。