TCFD提言に基づく情報開示 Sustainability

当社グループでは、長期ビジョン「PLAY EARTH 2030」のもと、「事業と環境の二つの側面におけるサステナビリティの両立」を目指し、事業構造を改革しています。
2022年度、その取り組みの一環として、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同し、当社グループの気候変動への取り組みを整理しました。
2024年度には、長期ビジョン「PLAY EARTH 2030」の実現に向けた外部環境分析の一環として、シナリオ分析の高度化に取り組みました。

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I.体制・ガバナンス

当社のサステナビリティマネジメント体制は、取締役会と連携する諮問委員会としての「サステナビリティ諮問委員会」とサステナビリティ経営の進捗状況の確認や、対応方針を検討する「サステナビリティ委員会」にて構成されています。サステナビリティ諮問委員会は、当社の取締役・監査役に加え、外部から諮問委員を招聘し、サステナビリティ推進に関連する社会動向や外部環境を確認するとともに、当社のサステナビリティ戦略について議論を行います。サステナビリティ諮問委員会での決定事項は、サステナビリティ委員会にて具体的な業務として執行されます。サステナビリティ諮問委員会およびサステナビリティ委員会は、四半期ごとに開催されています。

「取締役会」では、気候変動に関する基本方針や重要事項を踏まえ、事業戦略の策定、投融資審査等を総合的に審議・決定しています。

体制図
体制図

Ⅱ.リスク管理

当社グループは、経営課題に内在するさまざまなリスクに対応するため、サステナビリティ委員会、ガバナンス委員会をはじめとする各種の社内委員会を設置し、リスク管理およびコーポレート・ガバナンスの充実に努めています。
気候変動に伴うリスクと機会には、脱炭素社会への移行に起因するものと、気候変動の物理的な影響に起因するものが想定されます。こうした気候変動に伴う外部環境の変化を整理し、さらにアパレル産業への影響を評価した上で、当社グループの事業活動への影響度を鑑み、重要なリスクと機会を特定しています。その上で、1.5℃シナリオと4.0℃シナリオに基づくシナリオ分析を行い、リスクと機会の評価を毎年1回、行っています。評価したリスクと機会に関しては、サステナビリティ委員会にて報告され、対応方針、施策、目標の策定とともに審議されています。審議された内容は取締役会に報告され、その監督の下で最終決定されます。

また、経営戦略に関する意思決定など、経営判断に関するリスクについては必要に応じて法律事務所などの外部の専門家の助言を受け、関係部門において分析・検討を行っています。


Ⅲ.戦略

当社グループでは、2022年度に将来的な気候変動の影響を評価するため、1.5℃シナリオと4.0℃シナリオに基づくシナリオ分析を実施しました。また、2024年度にはシナリオ分析の高度化に取り組みました。その結果、シナリオ分析を通じて、当社グループの事業戦略や環境への取り組みが、リスクの低減や機会の活用に繋がる事を改めて確認しました。

気候関連リスク・機会の分析においては、国際的に認められた複数の気候変動シナリオを参照しています。気候変動が当社グループに及ぼすリスク・機会の抽出と、長期戦略を検討するにあたり、国際エネルギー機関(IEA)が公表している「Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表している第5次評価報告書の「Representative Concentration Pathways (RCP2.6/RCP8.5)」等を参照し、分析しました。

想定される社会 主な参照シナリオ 想定される変化 アパレル産業への影響
1.5℃シナリオ:脱炭素が進み、主に移行リスクや移行機会が顕在化する社会 IEA : Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE2050)
IPCC : Representative Concentration Pathways (RCP2.6)
・環境関連の政策規制が強化され、企業の温室効果ガス排出は厳しく規制される。
・同時に再生可能エネルギー普及政策の強化により、再生可能エネルギーの活用が進む。
・消費者のサステナビリティへの関心が高まり、低炭素、循環型の製品・サービスが拡大する。
・非財務情報開示の義務化が進み、ESG投資が定着する。
・異常気象(台風の頻発、ゲリラ豪雨、渇水、豪雪等)は、2024年度現在と同程度の頻度で発生する。
・環境負荷低減に向けリサイクル素材や新素材の活用が進む。
・「サステナブルファッション」が新たなブランド価値として定着する。
・消費者が低炭素や循環型の商品を好んで選択する。
・サステナブルファッションのインフルエンサーが登場する。
4℃:気候変動が進行し、主に物理リスクや物理機会が顕在化する社会 IPCC : Representative Concentration Pathways (RCP8.5) ・環境関連の厳しい政策規制は見送られ、温室効果ガスの排出は2024年度現在の速度で引き続き増加する。
・再生可能エネルギーは一部の企業で導入されるが、従来型エネルギーの需要が依然として大きい。
・ESG投資が進むが、非財務情報の活用は一部の投資家に留まる。
・異常気象(台風の頻発、ゲリラ豪雨、渇水、豪雪等)や極端現象の発生頻度が増加する。
・異常気象によりサプライチェーンが被災し、生産遅延などが頻発する。
・夏の猛暑日や冬の豪雪などの記録的な極端現象の頻発に伴い、機能性衣類への需要が高まる。

事業戦略の妥当性や2030年に向けた成長戦略の検討に向けて、1.5℃シナリオと4℃シナリオの2つの気候変動シナリオに基づき、移行リスク・機会および物理リスク・機会を抽出しました。具体的には、自社のバリューチェーンやステークホルダーを整理し、前回抽出した気候変動の移行リスク・機会および物理リスク・機会を踏まえ、改めてリスクと機会を洗い出しました。

シナリオ分析では、気候変動がもたらすリスク・機会が当社グループに及ぼす財務的影響について、定性的および定量的に評価しました。評価にあたり、影響度の基準をランク1~ランク5の5段階に設定しました。評価の結果、財務に一定の影響を与える可能性のある、影響度がランク3以上のリスク・機会を、「重要なリスク・機会」と定義しています。
重要なリスク・機会の内容は以下の通りです。

短期:5年未満 中期:5年超(2030年) 長期:10年超(2050年)
カテゴリ 移行 物理 リスク 機会 重要なリスク・機会 内容 影響度 発現時期 対応
2030年 2050年 短期 中期 長期
政策 炭素税導入による操業コスト増大 炭素税の導入・強化により、自社操業・サプライチェーン・物流等に関するコストが増大 3 4 ・サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けた取り組み
技術     環境負荷低減新素材、リサイクル素材への転換による生産コスト増大 構造タンパク質素材やリサイクル素材等の、環境負荷低減に向けた新素材への転換に関わるコストが増大 2 3   ・次世代素材やリサイクル素材の研究開発
市場   顧客の消費行動・意識変化への対応遅れによるブランドイメージ低下 脱炭素に貢献する製品の提供遅れや環境不祥事により、ブランド力が低下し、顧客離れが発生 3 4 ・環境負荷低減素材の積極的活用
・次世代素材発掘に向けたCVC開始
・生産プロセスにおける環境・社会への配慮
市場 サステナブルファッションへの先行的移行による競争優位性獲得 他社よりも先にサステナブルファッションに移行することで、サステナブルファッション市場におけるシェア拡大・売上増加 2 3
急性     台風・洪水などの災害によるサプライチェーン上の損害 台風や洪水などにより、店舗や生産工場が被害を受け、事業中断により売上が低下 4 4 ・サプライチェーンマネジメントの強化
急性 極端現象の増加によるスポーツイベント等への影響 猛暑や雪不足等の極端現象の増加により、屋外スポーツイベントやスポーツ実施が影響を受けるとともに、気温上昇により冬物衣料への需要が減少 2 3 ・アウトドアアクティビティ参加人口の動向を注視し、生産計画や商品開発に反映

Ⅳ.指標と目標

1.気候関連リスクおよび機会を評価する指標と目標

当社グループでは、不確実性が増す環境変化に適応し、持続的成長を実現するため、リスクと機会を見極めながら当社の強みを生かして、事業と環境の二つの側面におけるサステナビリティの両立を目指す長期ビジョン「PLAY EARTH 2030」を策定しました。その中でも環境問題への取り組みを最重要課題の一つとして2030年、2050年を見据えた目標を設定しています。

地球環境の改善に向けた環境重要課題として「グリーンデザインの推進」「脱炭素社会の実現」「循環型社会の実現」を掲げ、中期・長期の目標設定と環境改善に向けた具体策を進めています。

具体的には「グリーンデザインの推進」として環境負荷低減素材への移行を目標に、Brewed Protein™の開発拡大やリサイクル素材への転換推進、環境負荷低減副資材の活用などにより、2050年までに環境負荷低減素材を使用した製品比率100%を目指します。また、「脱炭素社会の実現」については、再生可能エネルギーへの転換を進めるとともに、サプライチェーンマネジメントの強化により、2050年にはサプライチェーンを含むカーボンニュートラル達成を目指しています。「循環型社会の実現」については、ファッションロス・ゼロを目標に、発注流動強化による総量規制やファッションロス・ゼロに向けた業界連携などを推し進め、2050年までにサプライチェーンを含む廃棄ゼロの達成を目指す計画です。

環境改善活動における戦略と具体策の説明図

2.温室効果ガス排出量の削減目標および実績

①削減目標

当社は、2050年でのサプライチェーンを含めたカーボンニュートラルを目指し、2025年には国内全事業所、2030年には全事業所・直営店でのカーボンニュートラルを目標として取り組んでいきます。

②実績

当社の温室効果ガス排出量削減の実績は、以下のページより最新情報をご覧いただけます。