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2025年3月期 通期

決算のまとめ

2025年3月期の売上高は1,323億円(前年比104.3%)となり、期初計画に沿った水準での着地となりました。通期の売上総利益率は52.1%(前年比▲0.8pt)とやや低下しましたが、第4四半期は原価率の低下に加え、プロパー販売比率の維持および一部品番での価格改定(+10%程度)により、売上総利益率は明確な改善傾向を示しました。営業利益は、前年同期比8.1%減益となる219億円となりましたが、J-ESOP(30億円)および本社移転費用(5億円)を含む一過性費用を除くと、過去最高水準を記録しましたとなります。この一過性費用は当初想定の45億円に対し、実績では35億円に収まり、影響は軽微にとどまりました。また、販管費の増加幅も期初想定の前期比+80億円に対し、実績は+37億円と抑制されました。広告宣伝費や採用関連費用の一部の見直しを進めるなど、柔軟な経費執行が収益性の確保に寄与しました。

2025年3月期決算実績(単位:百万円)
決算期 24.3期 25.3期
24年5月14日 25年3月25日 25年5月14日
項目 実績 期初見通し 前年同期比 修正見通し 実績 前年同期比 一過性費用を除く実績 左記
前年同期比
売上高 126,907 133,200 105.0% 132,000 132,305 104.3% 132,305 104.3%
売上総利益
%
67,173
52.9%
69,930
52.5%
104.1%
▲0.4pt
69,300
52.5%
68,925
52.1%
102.6%
▲0.8pt
68,926
52.1%
102.6%
▲0.8pt
販管費
(うち一過性費用)
%
43,326
34.1%
51,346
(4,500)
38.5%
118.5%
4.4pt
51,346
(4,100)
38.9%
47,020
(3,500)
35.5%
108.5%
1.4pt
43,520
32.9%
100.4%
▲1.2pt
営業利益
%
23,847
18.8%
18,100
13.6%
75.9%
▲5.2pt
21,000
15.9%
21,905
16.6%
91.9%
▲2.2pt
25,405
19.2%
106.5%
0.4pt
経常利益
%
32,601
25.7%
25,900
19.4%
79.4%
▲6.3pt
32,000
24.2%
30,806
23.3%
94.5%
▲2.4pt
34,306
25.9%
105.2%
0.2pt
当期純利益
%
24,281
19.1%
21,000
15.8%
86.5%
▲3.3pt
24,000
18.2%
24,444
18.5%
100.7%
▲0.6pt
26,894
20.3%
110.8%
1.2pt
(注)一過性費用は、期初に本社移転費用9億円、J-ESOP費用36億円として想定。修正時には、本社移転費用が9億円から5億円に減額。
期末の一過性費用は、本社移転費用5億円、J-ESOP費用30億円の合計35億円。

インバウンドが
第4四半期以降も好調を維持

中国本土からのインバウンド需要が想定を上回り、都市部直営店の売上を大きく押し上げました。通期のインバウンド売上比率は25.5%(前期17.3%)まで上昇し、第4四半期には冬物の定価販売が堅調に推移したことで、月次ベースでは過去最高の水準を記録しました。なかでも特にインバウンドに支持されているファッションカテゴリーは前期比+7.3%と引き続き高い成長を示し、インバウンド需要の回復を確実に取り込んでいます。

インバウンド売上構成比率(直営店)

推移グラフ

在庫は、計画内に着地
財務健全性も維持

第3四半期には暖冬の影響により棚卸資産が前期比119%まで一時的に増加しましたが、2025年3月期末には106%に収束し、計画範囲内の水準で着地しました。財務面では、自己資本比率は73.2%、D/Eレシオは0.003倍と、引き続き、極めて健全な財務体質を維持しています。資本コストを意識した資本構成のもと、引き続き、成長投資と還元の両立を進めていく方針です。

連結貸借対照表

  22.3期 23.3期 24.3期 25.3期
ROE(株主資本利益率) 24.7% 29.3% 27.0% 23.2%
自己資本比率 63.9% 67.4% 70.9% 73.2%
有利子負債(百万円) 4,188 2,585 1,372 354
D/Eレシオ(倍) 0.07 0.03 0.01 0.003

販売ロス率は通期で1.4%と安定して推移し、発注流動会議を通じた需給管理の高度化が構造的改善に寄与しています。

四半期別販売ロス率の推移

推移グラフ
(注)販売ロス率 (返品+値引き)/総売上高  上段の囲み数値は、各期平均値を記載

総括

2025年3月期は、気候変動や為替変動、インバウンド回復局面など、変動要素の多い事業環境下において、計画通りの売上成長と、収益性の回復基調を実現した一年となりました。
販売・在庫・価格・費用の4つの重点項目において精巧化が進み、収益構造の変革と成長投資の実効性が実績として裏付けられつつあります。
こうした成果は、中期経営計画に掲げた「事業基盤の再構築」と「グローバル成長」への確かな布石であり、最終年度とする2029年3月期の目標達成に向けた足場が整った一年となりました。


2026年3月期
見通しのポイント

2026年3月期の売上高は前期比106.2%とさらなる成長を見込んでいます。一部ブランドの終了の伴い注力ブランドへのリソース再配分と販管費構造の見直しが進むことにより、営業利益率および売上総利益率も前期水準を概ね維持できる見込みです。
2026年3月期は、構造改革後の事業ポートフォリオが本格的に稼働するフェーズにあたり、利益面における手応えを確認する一年となる見通しです。

2026年3月期 決算見通し(単位:百万円)
決算期 24.3期 25.3期 26.3期 見通し
項目 実績 実績 一過性費用を除く実績 今回見通し 前期比 一過性費用を控除比 (参考)
前中計数値
23年5月12日
前中計画との差分
売上高 126,907 132,305 132,305 140,500 106.2% 106.2% 149,000 ▲8,500
売上総利益
%
67,173
52.9%
68,925
52.1%
68,925
52.1%

52.7%
0.6pt


営業利益
%
23,847
18.8%
21,905
16.6%
25,405
19.2%
25,900
18.4%
118.2%
1.8pt
101.9%
▲0.8pt
26,800
18.0%
▲900
0.4pt
経常利益
%
32,601
25.7%
30,806
24.2%
34,306
25.9%
33,900
24.1%
110.0%
▲0.1pt
98.8%
▲1.8pt
33,400
22.4%
▲500
1.7pt
当期純利益
%
24,281
19.1%
24,444
18.3%
26,894
20.3%
25,400
18.1%
103.9%
▲0.2pt
94.4%
▲2.2pt


  1. 売上総利益率は52.7%を計画、価格政策と需給の精度がカギ
    2026年3月期の売上総利益率は52.7%(前期比0.6pt)を目標としており、製品投入の精度向上、在庫回転率の改善、そして価格政策の継続によって、利益率の安定的な反転を図ってまいります。
    売上総利益率の改善には、価格維持の徹底、適切な在庫投入タイミングの見極め、定価販売比率の向上といった需給管理精度のさらなる強化が不可欠となります。特に、2025年3月期第4四半期における改善傾向の継続性が問われる局面であり、施策の積み上げにより、収益力の底上げに努める方針です。
  2. 一過性費用がなくなり剥落し、本業の収益力が純粋に反映される構造へ
    2025年3月期に計上されたJ-ESOP(30億円)などの一過性費用は今期以降発生しない見通しですが、広告宣伝費などの精度を高め、より効果的な経費執行を進めていく方針です。
    株主還元については、2026年3月期では、年間配当を15期連続で増配し、174円(うち記念配当10円)を予定しています。配当性向は30.7%、総還元性向は40%以上を維持し、機動的な還元方針のもとで安定した実行がなされています。そのため、今期は利益の絶対額だけでなく、投資対効果や資本効率といった視点からの執行が重要となり、成長投資の回収フェーズとしての実効性が問われる一年となります。

株主還元方針

1株当たり配当金とDOE(株主資本配当率)の推移

推移グラフ
(注)21.3期、24.3期は記念配当10円を実施
26.3期の中間配当金(予想)87円には、創業75周年記念配当10円が含まれる。
26.3期の期末配当金を仮に該当株式分割前に換算しますと87円、年間配当金合計は174円となる。

中期経営計画
「PLAY EARTH 2030」の進捗

「気温依存」から「行動起点」へ、SPAモデルの進化が始動

中期経営計画の骨格となる「気温依存からの脱却」は、2025年3月期を通じて着実に進展しました。販売タイミングの平準化、限定製品の定価販売比率向上、夜間需要の取り込みなど、行動起点での消費創出が成果として表れつつあります。加えて、在庫の流動化、店舗のモジュール設計、発注流動会議による需給精度の高度化など、当社が20年以上かけて取り組んできた実需型ビジネスモデルの本質的な進化が輪郭を現し始めました。

  1. 海外戦略は「面的展開」へ、中国大陸・韓国・欧米で拠点形成進む
    オリジナルブランド「ゴールドウイン」においては、中国大陸での出店が5店舗まで拡大し、2026年3月期には64億円(前年比145.5%)の売上を見込んでいます。また、同ブランドによる韓国展開においては、感度の高い地域におけるポップアップ展開を経て、年内に旗艦店の開業を予定しています。欧米では、ニューヨークシティおよびロンドンでの旗艦店開設に向けた本格的な検討を開始し、海外売上比率10%という中期目標の基盤となる拠点形成が進んでいます。

「ゴールドウイン」ブランドの各地域での出店計画

2033年までに日本15店舗、中国70店舗、韓国20店舗、欧米8店舗
  1. コト事業が本格始動、モノと体験の融合へ
    今期、旅行ツアー会社のアルパインツアーサービスの子会社化を通じて、「製品」「店舗」「体験」の三位一体による価値提供がスタートしました。登山や自然体験など、ブランドの哲学を「行動」に落とし込む取り組みが進みつつあり、当社パーパスの「人を挑戦に導き、人と自然の可能性をひろげる」に沿ったコト事業も進展しています。これは、単なる事業の多角化ではなく、「PLAY EARTH 2030」の思想を体現する中核施策であり、今後の広がりと深化にご注目ください。

ツアー事業取り組みにおける効果

観点 効果
顧客体験 ブランド/直営店バリューの向上、LTV/NPSの向上
在庫回転 店舗・ツアー連動による“使用前提購買” と“体験後購買”の増加
PEP施策 ツアー催行による、“販促・販売・体験”の一体化とサイクル化
D2C施策 従来の製品購買データに加えて、“実体験”がCRM基盤に統合

このように、2026年3月期は中期経営計画の2年目として、定量・定性の両面において“加速の年”に位置づけられます。売上構成の質的転換、グローバル市場での起点形成、そしてコト価値の中核化が進みつつある今、次なる中期経営計画への橋渡しとして、重要なステージに立っています。