社外取締役メッセージInvestors
社外取締役 秋山 里絵
社外の視点を活かし、対話を深め、ガバナンスの進化に貢献
ゴールドウインの取締役会に参加する中、議論の活発さと真摯さは常に感じています。通常の取締役会だけでは足りない議論の時間を補うため、年に2回実施されている役員合宿では、重要なテーマについて時間をかけて意見を交わしています。こうした場があることで、問題意識の共有が深まるだけでなく、取締役間や事務局との距離も縮まり、通常の取締役会での議論もさらに充実したものとなってきました。多様なバックグラウンドを持つ社外取締役の参画により、異なる経験や視点が交差することで、多角的な指摘や提案がなされ、私自身にとっても学びの多い場となっています。
私が議長を務めるガバナンス委員会では、会社法や金融商品取引法、コーポレートガバナンス・コードなどの制度改正の動向を注視し、外部アドバイザーの助言も得ながら、変化を先取りした対応を心がけています。また、指名・報酬諮問委員会では、2024年度、CXO制度の導入や報酬制度の改革が進みました。業績連動報酬や株式報酬の比率を高めることで、経営判断のスピードと透明性を高める仕組みが整いつつあります。これらについては、指名・報酬諮問委員会の委員長の貢献がとても大きかったと思います。
取締役会ではサステナビリティに関する議論も進んでいます。環境だけでなく、社会・人権・ガバナンスなど幅広いテーマに目を向けながら、収益とのバランスをどう取っていくか、難しい判断が求められる場面もあります。中長期で企業価値を高めていく上で、引き続き真剣に検討していくべき課題です。
従業員の皆さんについては、誠実で真面目な印象が強く、会社の今後の方向性について真摯に考える姿勢を頼もしく思っています。私も重要テーマについては担当の方と1対1でミーティングすることがありますが、その熱意や思いを直接感じています。
一方、コンプライアンス面では、社会の価値観が大きく変わる中で、以前は当たり前だったことが認められなくなるケースも出てきています。変化を的確に捉え、実務に反映していくことがこれまで以上に欠かせません。また、海外事業やコト事業などの新しい領域に取り組む今、必要とされるスキルや人材を社内で育てるか、外部から迎えるかといった体制づくりも大切な課題です。ゴールドウインブランドの海外展開は、今後の成長を支える大きな柱になると期待しており、その上でも組織の進化が求められています。
「人を挑戦に導き、人と自然の可能性をひろげる」というパーパスには強く共感しています。単によい製品を提供することにとどまらず、健康的なライフスタイルや自然との共生、未来を担う子どもたちへの思いをも内包しており、まさにゴールドウインらしさを体現したメッセージだと感じます。社外取締役としてこのようなチャレンジを支えるため、社内とは異なる視点から発言し、よりよい意思決定や体制の構築に貢献していきたいと思います。そして何よりも、従業員一人ひとりが尊重される、働きがいのある環境の実現を大切にしながら、企業としての持続的成長を支えていきます。
社外取締役 好本 一郎
この1年で大きな進歩。
でも、経営者の努力に終わりはなく、これからもずっと続く
この1年でゴールドウインのガバナンスは着実に前進したと実感しています。その原動力は社長の明確なリーダーシップと経営チームの高い当事者意識です。クリアな事業ビジョンのもとに新たな経営体制が組まれたことも大きな転機となりました。ただし、私たちが目指すレベルはまだずっと高いところにあり、この動きをさらに加速させていく必要があります。
取締役会の運営に関しては、1年間の議事を振り返って分析したところ、報告や説明に非常に多くの時間が費やされていることに気づきました。真摯に運営しようとする気持ちゆえの結果ではあるものの、本来の機能である「戦略や事業に関する重要事項の議論」とのバランスが課題です。取締役会ではすでに自身の機能向上のための検討を開始しています。
指名・報酬諮問委員会では、取締役の定年制度や報酬制度の改定、取締役構成の考え方など、ガバナンス整備の案を決定し、取締役会に上程し承認を得ました。この間12カ月で12回という高い頻度で委員会を開き、客観的な情報をベースに議論を重ねました。多くが委員自身に関わるテーマでありながら、あくまで経営的視点を保ったオープンな議論が行われたことは、ゴールドウインの今後にとって意義ある一歩だったと思います。
これらガバナンス整備の過程を通じて経営陣の間には自由で率直な議論が広まってきています。これを一時的なもので終わらせず、仕組みや風土として定着させていくことが重要です。そのためにも、執行側と社外取締役が互いの立場や役割を理解し、リスペクトを持って対話を重ねていく必要があります。
「Goldwin Play Earth Park( ゴールドウインプレイアースパーク)事業構想」をめぐる議論からも多くを学びました。大きな投資を伴う初めての本格的コト事業となるわけですが、構想が具体化するまでは議論の焦点がなかなか定まらず、私たちもフラストレーションを感じていました。しかし、議論を繰り返し、実際に予定地に足を運んで現場を確認したり、外部の事例にも学んだりする中で、徐々に議論の質が高まっていきました。今後も、事業開始後のフォローも踏まえ、引き続き経営としての監督を続けていきます。
サステナビリティ戦略をめぐる議論も始まりました。まずは2025年度中の戦略策定を目指しており、社内取締役の賞与にもその結果が反映されることになっています。
サステナビリティというと、とかく環境の要素が重視されがちですが、私たちはそれだけでなく、自社における人的資本の活性化についてもフォーカスをしています。従業員が自社のミッションやブランドにリスペクトを持ち、いきいきと仕事ができる環境を整えることは会社の責務ですし、その結果が事業成長と企業価値向上に結びつきます。従業員との対話も必要です。エンゲージメントを高める上で従業員は何を課題と感じているのか、会社にどんなアクションを期待しているのか、もっとオープンに耳を傾けるべきです。現在、人事制度を抜本的に改めるためのプロジェクトが進行中ですが、人的資本活用の観点から経営陣もオーナーシップを持って参画していかなければなりません。
社外取締役 為末 大
身体と自然の接点から広がる、スポーツアパレルの可能性
私は「身体を通じて自然と触れ合う」は、人間の最も根源的な欲求のひとつであり、人間らしさやクリエイティビティを生み出す源泉だと考えています。その機会を社会に提供しているのが、ゴールドウインの事業です。何かに触れ、匂いを感じ、目で見るといった現実世界との身体的なインタラクションを通じて、人は世界を学んでいきます。ゴールドウインが取り組む「PlayEarth Park Naturing Forest」のように、子どもたちが自然の中で自由に遊び、世界に直に触れる経験は、豊かな成長を支える上で欠かせないものです。
スポーツもまた、その延長線上にあると捉えています。スポーツとは、身体と環境の間で遊ぶこと。競技のルールや流行は時代とともに変わっても、「なぜ人はスポーツをするのか」という根本的な動機は変わりません。人がスポーツを通じて自分らしさを取り戻し、自然とのつながりを再構築していくことは、これからの社会においてますます意義を深めていくと考えます。AIなどのデジタル技術が急速に発展する中だからこそ、そうした人間らしい営みの価値があらためて注目されているのかもしれません。
中期経営計画において、「Goldwin500」プロジェクトは要となります。グローバルでの事業推進を加速させる現在は、ゴールドウインが日本発のスポーツアパレルブランドとしての地位を世界で確立していくための大切な時期です。世界的にアクティビティを楽しむ人が増える中で、身体性や自然との接点を軸にしたブランドの可能性は、今後さらに広がっていくでしょう。
また、スポーツは身体と環境のどちらが欠けても成り立ちません。その意味で、サステナブルな地球環境を守ることはゴールドウインの事業に不可欠ですが、一方でファッション産業は環境への負荷が大きい業界であるのも事実です。この矛盾を一気に解決する魔法のような方法はなく、たゆまぬ工夫を続けていくしか道はありません。私は、ゴールドウインが非常にまっすぐ真摯に、この課題に向き合っていると感じています。自社のみで完結させるのではなく、Spiber株式会社との協業に象徴されるように、思いを共有する方々とともに歩みを重ねてほしいと思います。
策定されたパーパス「人を挑戦に導き、人と自然の可能性をひろげる」は、率直に素晴らしいと受け止めています。人間はどうしても人間中心に世界を考えがちですが、自然はもっと大きな存在であり、私たちはその中で抱かれているに過ぎません。謙虚な心を持ってそこに一歩踏み出していくことが、人間の進化であり、幸福でもあるのではないでしょうか。
私は社外取締役として、社外の目による素朴な問いを投げかけ続けること、そして目の前の課題を超えて「私たちは何者であるべきか」という視点を忘れずに発言することを意識しています。AI時代におけるスポーツの価値とは何か、アウトドアの可能性はどこにあるのか。そうしたテーマを今後も丁寧に掘り下げていきたいと思っています。
社外取締役 土谷 明
ITサービスと人材を、新たな価値創造への基盤として
社外取締役に就任し、最初の1年が過ぎました。就任以前、私にとってゴールドウインはスポーツアパレルとしての印象が強かったのですが、実際に関わる中で「人と地球にやさしい企業」へと大きくイメージが変わりました。「PlayEarth Park Naturing Forest」など、自然との触れ合いを通じて次世代の子どもたちの環境づくりに取り組む姿勢に、心から共感しています。
取締役会では、出席者それぞれの視点からの活発な議論が交わされ、明確な意思決定がなされています。一方で、業務報告に多くの時間が割かれる傾向もあると感じているため、戦略的な方向性の提示や、実質的な監督を担う場としての役割がさらに発揮されることを期待しています。この1年で、役員報酬制度や役員規程の見直し、CXOの設置など、将来を見据えた改革が進められ、2025年から新体制がスタートしました。こうした取り組みは、持続的成長に向けた強い意思表明になったと感じています。
私の専門であるIT・システム・セキュリティの観点からは、新規事業の立ち上げや既存事業の拡大、業務効率の向上を進める上で、ITサービスの活用がますます重要になっています。個別の事業にとどまらず、全社的な視点でのIT最適化が求められており、システム部門が中心となって、横断的な管理・監視体制を整えていくことが欠かせません。
海外展開やグループ会社化が進む中、ITガバナンスの重要性も増しています。ゴールドウインのセキュリティポリシーへの準拠状況や、情報管理・権限管理におけるリスクとルールの明確化について提言したところ、その一部は「情報セキュリティに関するチェックリスト」に反映され、すでに運用が始まっています。今後は、顧客情報の取り扱いも含めた内部監査の充実にも期待しています。
「Goldwin500」の達成に向けては、海外展開を担う人材を育て、活躍を促し、評価するための仕組みづくりが急務となっています。究極的には、企業の力は「人」です。魅力あふれる人材が集まり、能力を発揮してもらえるよう、いかに環境を整えるかが問われています。特に、ダイバーシティ推進はグローバル企業として不可避のテーマであり、社外ではない女性取締役の選任も重要です。
従業員の皆さんには、常に前向きさや誠実さを感じています。基幹システム刷新プロジェクトのキックオフでは、100名を超える方々が自らの役割と責任を語り、プロジェクトへの熱意が伝わってきました。その知恵と経験が結集され、一体感が発揮されたとき、どのようなパフォーマンスが生まれるのかは非常に楽しみなところです。
ゴールドウインは今、パーパスを軸に新たな価値の創出に挑むフェーズを迎えています。私もまた、IT活用推進を通じて、その歩みに貢献したいと考えています。例えば「Play EarthPark Naturing Forest」では、自然とのつながりを感じる映像・仮想体験などに大きな可能性があるはずです。アパレル、スポーツ、自然という領域の親和性を活かしながら、未来志向で挑戦を続けるゴールドウインに、社外取締役として伴走していきます。
社外取締役 井本 直歩子
豊かな地球環境を次世代へつなぐ。その挑戦を支えたい
気候変動をはじめとする環境問題は、地球と人類の未来を左右する喫緊の課題です。こうした危機感を強く抱く中で、環境に配慮したファッション産業のあり方を追求するゴールドウインに魅力を感じ、2024年度より社外取締役として参画しています。また、ゴールドウインは会社が大きく成長する今、ダイバーシティ推進などさまざまな改革が求められる段階です。教育やスポーツ界で私が注力しているテーマについて、ビジネスの現場でその推進に関われることには大きな意義とやりがいを感じています。
この1年で、社内からは改革や成長戦略に関する多くの提案が上がり、「守り」と「攻め」の両面から議論を深める体制が徐々に整ってきました。特に、地球環境保全の理念のもとでの「Play Earth Park Naturing Forest」の挑戦や、ゴールドウインブランドの海外展開、「Goldwin Play Earth Fund(ゴールドウインプレイアースファンド)」を通したベンチャー企業との提携など、社会課題への果敢な取り組みに誇りを感じています。
経営トップが明確なビジョンを掲げ、自ら挑戦を続ける姿はとても印象的であり、その意志は社内にも確実に浸透してきています。一方で、「日本的」な企業文化が根強く残る側面もあり、グローバル企業へと進化するためには、さらなる改革が欠かせません。特に、トップ層の多様化や意思決定のスピード、現場の声を率直に汲み上げる仕組みづくり、そしてコンプライアンス体制の強化は重要な課題です。議論しやすい環境は整ってきていますが、今後さらに、ジェンダーや国籍など多様な背景を持つ人材が加わることで、より本質的で活発な議論が期待できるでしょう。
社外取締役として私が担うべき役割は、人事戦略策定や、ジェンダー、多様性、人権といったサステナビリティの観点から、外部の有識者とつなげたり、率直な意見を伝え続けることだと考えています。実際、出社のたびに多くの従業員の皆さんが声をかけてくださいますが、とりわけ女性従業員からは、出産を経たキャリアの継続や、女性リーダーとしてのあり方に悩む声を聞くことがあります。こうした現場の声を的確に取締役会での議論に反映させ、制度改革やよりよい働き方、環境づくりにつなげていけたらと考えています。
ゴールドウインの製品については、機能性とデザイン性を高い次元で両立させ、アスリートの声を丁寧に反映していく姿勢に感銘を受けています。また、契約アスリートが競技以外にも挑戦できるよう後押しし、人間力の強化にまで貢献している点にも期待しています。
さらに、私自身が長年取り組んできた環境教育の観点からは、「Goldwin Play Earth Park(ゴールドウインプレイアースパーク)事業構想」のように自然と子どもをつなぐ活動に深く共感しています。自然と融合するスポーツや遊びを通し、自然の豊かさ・ありがたさを感じ、今の地球環境をどう次世代に残していくか、私たち人間のあり方までも追求するような事業に育ってほしいと思います。こうした取り組みを、ゴールドウインならではのプログラムとして社会にインパクトを残せるよう、私も最大限に知見を活かし、貢献していきます。