社外取締役メッセージInvestors

※2024年6月新任の社外取締役メッセージについては、順次掲載予定です

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取締役 / 秋山 里絵

ゴールドウインの社外取締役となって5年目になります。私は、20年以上、企業法務を主な業務分野とする弁護士として働いてきましたので、コンプライアンスやリスク管理の面については、特に注意して検討するようにしています。弁護士という立場上、ついリスクに目が行きがちですが、近時はコーポレート・ガバナンスにおいて、適切なリスクテイクを後押しすることが求められています。そのため、単にリスクを低減する方向だけでなく、適切なリスクを取ることについても意識して、バランス感覚をもつように心がけています。

また、社外取締役は、株主目線で会社の業務執行を監督するということが役割のひとつだと思いますので、取締役会で報告される業務や、議案の内容について、株主目線から見て合理的か、論理的かということを確認するように努めています。

当社の取締役会では、取締役や監査役が自分の意見を発言できる雰囲気があると思います。しかし、取締役会の議題や報告事項が多いため、取締役会では議論をする時間が十分にとれないと思うこともありました。そのため、2022年から、取締役・監査役のオフサイトミーティングを行い、中長期的な経営課題について話し合う時間を取ることにしました。いつもと違う環境で、忌憚なく話し合いができるので大変有意義なのですが、それでも時間が足りないと思うくらいです。このように、取締役会の運営については改善をしながら進めています。

ファッション業界は、環境負荷が比較的大きな産業だと考えられており、当社にとっても、環境負荷の低減は重要な課題です。当社は、温室効果ガスや廃棄物の削減に積極的に取り組み、また、リサイクル・リペアを推進して、お客さまにもこのような活動に参加していただくように働きかけています。さらに、最近取り組みを始めた「PLAY EARTH PARK NATURING FOREST」では、遊びやスポーツを通して地球を感じてもらい未来の環境を守る心を育てるなど、ユニークな活動を目指しています。経営陣も社員の皆さんもサステナビリティや循環型社会については強い意識をもって業務に当たっていると思います。このような当社の取り組みが、お客さまにも支持されて、大きな輪となって、循環型社会・サステナブルな社会を実現する原動力となることを期待しています。

好本 一郎のポートレート写真

取締役 / 好本 一郎

私が取締役を拝命してから2023年で3年目になりますが、この間、ゴールドウインは急速に事業を発展させ、並行してコーポレート・ガバナンスの整備を進めてきました。

2023年3月期には初めて売上1,000億円を突破するとともに各利益においても創業以来の最高値を達成、5ヵ年の中期経営計画のゴールは上方修正し、同時に財務体質も強化してきました。その一方で、経営管理組織や内部統制システムの充実などコーポレート・ガバナンス体制の整備を進め、社会の要請に応えるとともに、今後の成長に向けた企業の基盤を固めてきました。

このように順調な歩みを記した2年間でしたが、ゴールドウインのポテンシャルや社会的使命を考えれば、これはあくまで次の時代に向けての第一歩です。このことは役員メンバー全員の共通意識であり、今後の成長に向けた事業ビジョンやこれからのゴールドウインの存在意義等について、オフサイトも含め、様々な形でのオープンな議論を始めています。

「スポーツを通じて、豊かで健やかな暮らしを実現する」というミッションは揺るぎませんが、今後想定される事業環境変化の中で、これを貫き、社会の要請に応えながら企業価値を継続的に向上させていくためには、経営陣も自分自身を常に変化させる意識を持つ必要があります。まずは近未来へのビジョンを早急に具体化し、社員とも共有した上で、必要な投資や変革に踏み込む勇気を持つことです。

一方で、これと同様に大切になるのが、監督機能を堅持しながらも取締役会が業務執行側に権限を有効に移譲し、経営陣がより迅速に思い切って判断できる環境をつくることです。これはコーポレートガバナンス・コードの趣旨でもあり、企業がそのサイズや活動領域を健全に広げる上で必ず必要となるポイントです。また、これには、市場環境の急速な変化に対応するために市場に近い場所での発想を尊重するという側面もあります。この2年間、ゴールドウインはガバナンス体制整備に注力し結果を出してきました。これを踏まえ、これからはその運用の質をさらに向上させるステージになります。企業経営は常にチャレンジの連続ですが、株主価値最大化というゴールを目指すためにはそのチャレンジに立ち向かっていく必要があります。コーポレート・ガバナンスという枠組みを守りながら、フレキシブルに新しいものに挑戦していく姿勢を続けていきたいと思います。

為末 大のポートレート写真

取締役 / 為末 大

アパレルの役割を考えると、「思想」と「機能」に集約されるのではないかと考えています。自分の考えや気持ちを表し社会的位置を示す役割と、寒さや暑さをしのぎ危険から身を守り快適に動きを促す役割です。スポーツアパレルは「機能」に主な価値を見出し発展してきました。ゴールドウインの面白さは、機能が最も求められる競技スポーツというアイデンティティを持ちながら、サステナブルな地球環境を守り共生していくという思想を追求していることだと思います。

アパレルは、環境に大きく負荷をかけている産業でもあります。地球にとってよりよいビジネスを行うことはそう簡単なことではありません。サプライチェーンは複雑であり、コストをすべて製品に反映させればお客さまに満足いただくこともできません。これをやれば解決するという魔法のような方法はなく、たゆまぬ工夫を繰り返すしかないのだと思います。いくら綺麗な思想を掲げても、現実を変えていけなければ意味がありません。

実はスポーツの定義は世界中でそれほど明確に定められているわけではありません。欧州ではチェスはマインドスポーツと呼ばれスポーツ協会に含まれている国もあります。スポーツとは何か。なぜスポーツが生まれたのか。なぜ人はスポーツを行うのか。私は元アスリートですので、こうした疑問を常に持ちながら考えてきました。表面だけを捉えると時代とともにぶれてしまいます。以前テニスコートだった場所が今はフットサルに置き換わることも少なくありません。昔は罰走と呼ばれていた長距離走は、今や競技人口200万人を超える一大スポーツになっています。目の前のスポーツにはトレンドがありますが、その根底にある「人がスポーツを行う動機」は普遍だと考えています。

私は人間には身体と環境の間で遊ぶことを喜ぶ性質が備わっていると考えています。人は本質的に遊ぶ性質を持っており、環境との間でやりとりすることを楽しみます。身体と環境、そのどちらが欠けてもスポーツは成り立ちません。

目の前の課題に注意を向けていると、つい本来の目的を見失うことがあります。外部の視点を持ち、またスポーツをバックグラウンドに持つ身として、「素朴な問い」を投げかけることを意識しています。本質的に機能するガバナンスは「私たちは何者であるべきか」を常に意識し、社会に価値を提供し続け、組織もまたそれに合わせて柔軟に変わり続けることだと考えています。