社外取締役メッセージInvestors

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取締役 / 秋山 里絵

挑戦する文化を大切に、
サステナビリティでも業界をリードする

初めて私が社外取締役に就任した5年前に比べ、ゴールドウインの取締役会は大幅に活性化が進みました。社外取締役が増え、規定の見直しなどにより議題を絞り込んできたことが背景にあると思います。意見を交わす機会・時間が増えたことで、取締役それぞれの考え方がわかるようになり、さらに議論が深まるという好循環が生まれています。

私が議長を務めるガバナンス委員会では、東証のコーポレートガバナンス・コードや経済産業省・金融庁での議論の動向について情報共有し、ガバナンスの進化に努めてきました。取締役会と比べて参加人数が少ないため、より深い議論ができます。取締役会に議題として上程する際は、ここで話し合った内容を報告することで、取締役会での議論の一助としています。2023年度には、株主利益を守るための新株予約権を利用した方策の継続が、主要なトピックスのひとつとなりました。いろいろな意見がありながらも、議案を上程させていただき、株主の皆さまの承諾を得ることができました。

取締役会の実効性評価の取りまとめもガバナンス委員会で行っています。実効性評価の結果を受けて開始したのが役員合宿であり、大きなテーマについてはここで時間を取って議論できるようになったことが、ガバナンス強化につながったと考えています。 

「Goldwin500」の要となるゴールドウインブランドは、これからまさに成長期を迎えようとしています。グローバル展開にあたっては、文化・市場・サプライチェーンの違いに直面し、地政学リスクは避けられません。それらを踏まえても「Goldwin500」は当社の将来の成長に大きく貢献するものであり、その意欲的な計画を私たちも支え続けます。また、海外進出やコト・トキ事業といった新たな挑戦の上では、それを可能とする組織文化の構築が欠かせません。従業員の皆さんに成長の機会を提供し、積極的なチャレンジを促すとともに、外部から優秀な人材を引き付けられるような制度・文化が必要だと考えます。

今日では、「サステナビリティ」が経営の重要課題として広く認知されるようになりました。ゴールドウインはこの言葉が注目されるようになる以前から、実需型ビジネスによる持続的成長を掲げ、環境に配慮した事業を地道に目指してきました。アパレル産業は環境負荷が高いからこそ、その低減に取り組む意義があり、ゴールドウインらしさを発揮し、サステナビリティでも業界をリードしてほしいと思います。「Brewed Protein™」を使用した製品づくりは私個人としても期待しており、「地球環境の再生」という重要な価値観を全面的にサポートします。

ゴールドウインは、スポーツやアウトドア体験を通して人々の生活を豊かにする、そして循環型社会を実現するという大きなビジョンを掲げています。多くの株主がこのビジョンに共感する一方、長期ビジョンと毎期の収益を両立させるのは企業にとって非常に困難です。しかし、それこそが今ステークホルダーから真に求められているのだと確信しています。

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取締役 / 好本 一郎

「攻め」のコーポレート・ガバナンスで企業成長を支える

私はコーポレート・ガバナンスには2つの側面があると思っています。ひとつは法令や社会が求めるルールを遵守する「守り」の部分、もうひとつは整えた仕組みを効果的に動かす「攻め」の部分です。コーポレート・ガバナンスのゴールが、スムーズな企業活動とステークホルダーへの十分な価値提供であることを考えると、この「攻め」の部分が大切なのですが「守りさえできていれば」と考える企業も少なくありません。

そんな中、ゴールドウインはこの1年で、経営陣に「攻め」の動きがかなり出てきました。経営上の重要事項について、変化を意識した前向きな提案が増え、オープンな議論が進んでいます。ガバナンス委員会と指名・報酬諮問委員会では忌憚のない意見が交わされ、コーポレート・ガバナンスの維持に重要な役割を果たしています。「攻め」の姿勢が高まる最近の変化の背景には、この両委員会の存在があると考えます。

指名・報酬諮問委員会は社内取締役4名と社外取締役5名で構成されますが、取締役の任命、報酬、定年など自身に関わる事項について議論し、諮問案を決定するため、気を使う場面も少なくありません。それゆえに取締役会だけではなく、こうした別の委員会を設け、透明性を担保しながら最適解を模索していく体制が求められるのでしょう。私は委員長として、聖域をつくらず議論し、世の中の流れを意識して会を取りまとめることに尽くしてきました。もともとこの委員会を2019年に設立したことがゴールドウインの英断であり、その趣旨を皆さんがよく自覚し、あるべき方向に進んでいると思います。

2023年度には、いくつかのブランドの事業終了について議論し、決定しました。長年提供していたブランドの終了はやさしい決断ではなく、お客さまや関係者の方々、ブランドを支えてきた従業員の皆さんの気持ちを思うと躊躇もありました。しかし、適切なブランドポートフォリオの維持は企業の使命であり、それがステークホルダーの利益を守ることにつながります。さまざまな意見がありましたが、公明正大な議論を経て、取締役会としての責任を果たすことができたと考えます。

中長期の計画を成功させる上で極めて重要なのが、人材マネジメントです。ゴールドウインの新中期経営計画(2025年3月期~2029年3月期)はすでに1年目が始まっており、足元とこれから5年間の人材需要を満たしていかなければなりません。企業規模の拡大に伴って従業員数も増える中、新世代の人々は従来とは異なる「仕事観」を持ちます。そのエンゲージメントを引き上げる施策も、経営として真摯に検討していくべき課題です。また、海外展開においては多様化する文化や価値観とどう向き合い、従業員との信頼関係を高めていくか、これまでとは次元の違う覚悟が必要です。

ゴールドウインの最大の強みは、従業員が自社ブランドと製品にプライドを持っていることです。このエンゲージメントレベルをさらに引き上げ、会社と従業員の間の相乗効果を高めていくことが、中期経営計画を成功に導くと考えています。

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取締役 / 為末 大

環境・社会への責任を果たし、新たなアパレルの世界を創造

ゴールドウインは、実直で真面目な企業文化に支えられた、モノづくり精神豊かな企業だと思います。現在は、この文化を継承しつつ、世界に目を向けて日本発のグローバルブランドを生み出していくフェーズを迎えており、私も大変ワクワクしています。海外事業は予測しづらいものですが、挑戦する意志を示すことが、従業員の皆さんに方向性を理解してもらい、共感を得ていくために欠かせません。グローバル展開のリスクを認識した上で、そのリスクを取り続けなければならないのだと思います。成功するかどうかは、各国の文化に精通したスペシャリストをどれだけ組織内に持ち、同じ方向を向いていけるかにかかっています。

私は社外取締役に就任して3年目となりますが、ガバナンス面では、取締役会をはじめどの会議体でもさまざまな意見が上がり、闊達な議論が交わされています。また、そこで上がった意見は十分に経営に反映されていると感じます。ただ、女性役員比率がまだまだ低いため、女性の視点を取り入れにくいのは今後に向けた課題と言えます。

新しく策定したパーパス「人を挑戦に導き、人と自然の可能性をひろげる」には、人と自然が相互に影響し合いながら、双方の可能性を引き出していくようなイメージを抱いています。ゴールドウインは、人と自然の両方への意識を深めてきた会社であり、それを踏まえて目指す方向性をうまく表現した、素晴らしいパーパスだと思います。

アパレル業界は環境負荷が高い産業です。それに対し、ゴールドウインは自然環境との親和性が高いスポーツやアウトドアを事業ドメインとしています。ゴールドウイン製品を着用し、自然と触れ合う人が増えることで、自然環境への意識が社会全体でもっと高まることを期待します。また、素材の観点から製造プロセスを見直すなど、環境負荷の低減につながるイノベーションを実現し、新たなアパレルの世界を生み出していってほしいと思います。

今日、人々は単純に「利益が高い」というだけで企業を選びません。これは世界的な流れであり、次世代にはこの傾向が一層強まるでしょう。従来の利益重視の考え方では優秀な人材を獲得できず、お客さまから共感を得ることもできません。環境・社会への責任を果たす姿勢を示し続けることが重要であり「GOLDWIN PLAY EARTH PARK(ゴールドウインプレイアースパーク)事業構想」のような取り組みはそのために非常に有効であると考えます。

スポーツには、スタジアム内で行われるものと自然環境の中で行われるものがありますが、特に後者は今後ますます大きな市場に成長すると予測されます。自然と直接な接点があるスポーツは、必然的に人々の自然環境への意識を高めます。ゴールドウインには、従来のスポーツの枠をさらに広げ、スポーツを通して自然環境との向き合い方を変えるような文化創出企業になることを期待しています。

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取締役 / 土谷 明

IT活用と人的資本の強化で、さらなる企業価値向上へ

2024年度からゴールドウインに社外取締役として参画しました。これまで私はITサービスの分野で顧客企業の課題解決や海外進出などに携わっており、ゴールドウインの掲げる未来の姿にデジタル技術を取り入れ、新たな企業価値創造に貢献することが、今果たすべき役割と考えます。

すでに事業拡大や業務効率化にはITサービスが不可欠となる中、昨今では生成AIの登場により、これまで実現し得なかったことが身近にできるようになりました。なぜDXを推進するのかを経営層と現場が正しく理解し、強いリーダーシップのもと柔軟に行動できる組織文化が求められています。IT業界での経験を活かし、どのような技術がどんな仕組みで動いているのかを多くの人に知ってもらい、全社的なITリテラシーの向上に尽くしていきます。

IT技術に関わる人材育成はもちろん、人事評価のあり方や健康経営を含め、人的資本への取り組みは特に注視しています。人材戦略において、組織の活性化を図るため欠かせないのが人事ローテーションです。国内外を問わず、事業部を横断して活躍できる人材や、スペシャリストの育成・確保が課題となっており、これを実現するための人的投資が、企業の持続的成長の鍵を握っています。

「Goldwin500」を成功させるためには、関わるすべての従業員がゴールドウインブランドの一番のファンとなり、目的やポリシーを共有して活動していくことが重要と考えます。グローバル展開にあたっては、進出先の文化や働く人の価値観を理解し、尊重することも欠かせません。さらには、ゴールドウインのITポリシーに準拠した、コンプライアンス・人事・評価・システムなどを含むグローバルスタンダードを構築していく必要があります。

ガバナンス面では、ゴールドウインは経営の監督・管理の仕組みやプロセスが明確で、適切な情報開示もあり、透明かつ公正に運用されていると感じます。今後もこれを維持し、高めていくためには、サイバーセキュリティや情報管理の強化も重要なポイントです。サイバーアタック・情報漏洩・データ改ざんなどの具体的な事例を取り上げ、従業員や関係企業へのコンプライアンス教育を強化していくべきです。

また、ゴールドウインには「PLAY EARTH PARK NATURING FOREST」のようなユニークな取り組みがあります。自然体験や遊具を使って自由な想像力で遊べる場の提供は、子どもたちが地球を身近に感じながら、地域・家族とともに成長する社会の実現につながります。また、そうして育った子どもが次世代へと体験をつなげていく循環を起こせると思います。

固定概念にとらわれず、未来志向でビジネス変革に挑戦するゴールドウインの姿には非常に共感しています。人類だけでなく、地球上の動植物が生息し続けられる環境づくりに向け、製品を素材から見直し、カーボンニュートラルの達成を目指してほしいと思います。地球にやさしく、人にやさしいモノづくりへの挑戦に期待します。

井本 直歩子のポートレート写真

取締役 / 井本 直歩子

自然との調和を目指すパーパスの実現にともに挑戦したい

私は2024年度、ゴールドウインの社外取締役に就任しました。「人を挑戦に導き、人と自然の可能性をひろげる」というゴールドウインの新たなパーパスには、就任のお話をいただいた時から、心から共感しています。私自身のパーパスとも重なるもので、これが社外取締役をお引き受けする決め手となりました。私たちは自然に生かされている以上、その生活や経済活動が自然を破壊するものであってはなりません。いちアパレル企業として子どもたちに豊かな自然を継承していくという、強い信念を持ったパーパスの遂行にともに挑戦できることが光栄ですし、ワクワクしています。

そのパーパスを具現化する「GOLDWIN PLAY EARTH PARK(ゴールドウインプレイアースパーク)事業構想」に大きな期待を抱いています。子どもが生まれつき持っているセンスオブワンダーを、いかに雄大な自然の中で成長させ、自然の豊かさのありがたみを感じられるか。自然と融合するスポーツや遊びを通してそれを楽しみ、よりよい地球環境を残すために、人間のあり方まで見つめ直していく⸺そのような事業に育ってほしいと思います。特に都市部では、子どもや大人たちが自然と触れ合う機会が減る中、ゴールドウインという成長企業がこうした機会を提供することに大きな価値を感じています。

今後、環境負荷低減や循環型社会の実現において、ゴールドウインがますます業界をリードしていくために、全力を尽くしたいと思っています。そのためには、今までの意識や行動を変えるような新しい発想が求められます。ひとつのブランドが単体で成し得るものではなく、業界横断的に進めていく必要があり、そこでゴールドウインが果たすべき役割は増しています。

ゴールドウインの経営には力強さや勢いを感じる一方、今後に向けた課題となるのは、その「エンジン」となる人材戦略やガバナンス体制の整備だと考えています。特に、ゴールドウインが国際競争力を高めて世界で成長していくために、多様な観点からの議論が不可欠であり、コアの意思決定層における多様化推進は大きな鍵となります。

現在、トップ層は圧倒的に女性が少なく日本人男性で占められていますが、これを見直していくことは欠かせません。国際機関で長く培ってきた経験を活かし、多様な人材が活躍する組織づくりと、世界に挑むグローバル人材の育成・活用をサポートできるよう注力します。特に管理職のダイバーシティは必ず前進させたいと思っています。

組織を外から俯瞰し、異なった価値観を持ち込むのは、社外取締役としての重要な責務です。同時に、現状の取り組みや社内の意見をよく知ることも大切であり、現場を訪ね、できるだけ多くの従業員の皆さんと対話を重ねていければと思っています。また、アスリートとしての観点からも、ゴールドウインが競技スポーツのもとで愛され続け、アスリートとともにサステナブルな社会の実現を目指せるようサポートを続けていきます。