
新連載“Goldwin Voices”がスタートしました。これまでも、経営戦略や財務状況、中期経営計画に加えて株主還元策など、必要な情報を発信してきた当社IRサイト。さらに今後は、国内の個人投資家の皆さまや海外の投資家の皆さまにも注目していただけるようなIR施策の発信に加え、「ヒト」を通してモノづくり、コトづくり、環境づくりなど当社のさまざまな取り組みについて紹介していきます。
第1回は、当社IRを統括する金田武朗(取締役CSO・常務執行役員・総合企画本部長)が、IR連載企画を立ち上げた背景と狙いについて語ります。「新たに実施する株主還元策、株主優待制度や株式分割もまた長期的なファンづくりの一環」と話す金田の本音に触れてください。
ゴールドウインは何者か知ってもらう
大学生100人のうち3人ーー。これは、金田が講師を担当した大学の講義冒頭で「ゴールドウインを知っていますか?」と問いかけたときに知っていると答えた人の数だ。続けて「『ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)』を知っていますか?」と聞くと、8割の大学生が知っていると答えたという。アメリカのアウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」の商標権を、当社が取得したのは1994年のこと。以来30年超、日本で展開している「ザ・ノース・フェイス」の製品は、当社が企画・開発・販売を手掛けてきた。独自の製品開発を続けた結果が、現在の大学生が知る「ファッション性と機能性を兼ね備えた街着」としてのザ・ノース・フェイス。これは日本の独自ラインで、本格的な登山向けアウトドアウエアが主体の米国の製品とは一線を画す。だが、大学生はもとより一般消費者、株式市場でも、それがゴールドウインという会社が行っているというのも知られていない現実がまだまだあるのだ。
「IRとして、まずはゴールドウインという会社を知っていただかないと始まらない。ゴールドウインが何者なのか、何を目指しているのかを粘り強く、一貫性を持って発信し続けること。これが、IR活動を強化していく当社において、今やるべき第一歩だと思っています」(金田)

チャレンジングな道程の現在地を示す
「ザ・ノース・フェイス」は、当社が商標権を持つ日本と韓国での展開にかぎられる。今後さらに当社が成長するためには、オリジナルブランドで海外を開拓する必要がある。そこで次の成長の柱として「ゴールドウイン」ブランドを育成し、2033年3月期の海外売上高を500億円規模にするプロジェクトが動き出している。
「このチャレンジングなプロジェクトにあたって、『ゴールドウイン』ブランドの売上高を開示していないのは問題ではないかと思いました。目標値の500億円だけ示しても、現在地がわからなければどうやって実現するのか、その道のりが見えない。そこで、主要ブランドである『ゴールドウイン』と『ザ・ノース・フェイス』の売上高を開示すると決めました。2024年4月にプロジェクトがスタートしてから1年目、2025年3月期の「ゴールドウイン」ブランドの売上高は44億円。10年にわたる時間軸を切り取って開示することには、誤解が生じるなどのリスクがあることも理解しています。
ただ、現場が何としても達成しようと夢中になっている様子や困難、できていないことも含めてどういう道筋で取り組んでいるのかを説明する積み重ねが、株の長期保有につながる安心感にとって、必要だと思うのです。ステークホルダーの方々も、ともにワクワクしながら見守って欲しいと考え開示しています」(金田)

決算情報と同じくらい実直に届けたい挑戦のプロセス
もちろん、四半期や1年ごとの決算で精度が高い業績予想を開示していくことは大事なことだ。一方で「中長期的な当社の取り組みも同じくらい大事にしたい」と金田は声に力を込める。金田がIRにおいて大切にしているのは、「実直な開示」と「中長期での共感の醸成」だ。
「決算情報や株価推移など短期的な数値はもちろん重要ですが、目先の利益だけで評価されるようなIR活動はしたくない。『ゴールドウイン』ブランドや『ニュートラルワークス.(NEUTRALWORKS.)』などのオリジナルブランドも、『ザ・ノース・フェイス』も同じ思いで取り組んでいること。体験、経験、時間、空間……ライフスタイルそのものがパッケージされて、プロダクトとリンクしていること。当社が何を目指しているのか、どういった形で実現しようとしているのか、一貫性をもって粘り強くお伝えしていく。
たとえば、当社の筆頭ブランドの『ザ・ノース・フェイス』をはじめ、売り上げの多くを占めているアウトドア関連の事業にとって、地球の環境問題は大きな課題です。ですが、当社だけで取り組んでも限界がありますよね。事業を通じてライフスタイルや自然とのかかわりまで提案することで、それを心地いいと感じる共感者、ファンを募り、同じゴールを目指していく。当社の思いや挑戦のプロセスを丁寧に伝えることで、共感者としての個人株主さまが一人でも多く増えてほしいと考えています」(金田)

「モノ」「コト」「環境」をつなぐ循環を描く
当社の本業であるスポーツ、特にアウトドアのフィールドは自然にあり、社会・環境課題を解決し自然と共生する取り組みが拡大すれば、つれて、ビジネスも躍進する。創業から続いてきた、機能性を追求するために素材から徹底的にこだわったモノづくりは“コトづくり”に広がり、自然がより豊かになるための“環境づくり”にまで広がっているのはそのためだ。製品を売って終わり、ではなく、自然との共生を提案するツアーや体験など共感を育む場をつくることで、サーキュラーエコノミー(循環経済)の一端を担っていく。2027年初夏のオープンを目指している、富山県での「Play Earth Park Naturing Forest(プレイアースパーク ネイチャーリング フォレスト)」は、この当社の方針を象徴するプロジェクトのひとつだ。
「創業の地である富山県のプレイアースパークに遊びにきてもらい、自然のなかで楽しみながら地球環境を守るために大切なことを学び、知ってもらう。体験するとしないでは、理解度が大きく違いますよね。富山県南砺市桜ヶ池周辺の約40ヘクタールの広大な土地は、その名の通り美しい自然と桜の名所として知られています。一方で、景観悪化や鳥獣被害、災害発生のリスクなど耕作放棄地の問題も抱えていました。そのため、原野に戻すのではなく、自然や生物多様性の損失に歯止めをかけ、回復軌道にのせるための設計、開発を進めています。大人も子どもも、遊びながらネイチャーポジティブ(自然再興)を体感できる場所になる予定です。もちろん自然のなかで遊ぶときは、当社の製品を持っていくと便利ですよ、と知ってもらう場でもあります」(金田)

IR活動も長期的なファンづくりを重視
当社が手がけた大阪・関西万博のパビリオンスタッフユニフォームに採用した新遮熱素材など、環境や気候変動に対応できる製品開発を積極的に行っている。「こういった環境配慮型製品を買うという行動も共感の一つの形だ」と金田は考える。直近、2025年10月1日付けで1株を3株にする株式分割を実施、加えて、保有期間や株式数に応じて、当社の総合オンラインストア「Goldwin Online Store」で使える20〜40%の割引券を付与する株主優待制度(中間優待)を新設した。これもまた、キーワードは「共感」だ。
「個人投資家の方には、ビジョンやプロダクト、価値観に共感し、長期的に応援してくれるファンになっていただきたい。株式分割、配当の見直し、魅力的な優待のご用意など、個人投資家の皆さまがファンとして長期保有したいと思ってもらえるようなIR活動を充実させていきます。当社製品に触れ、知っていただけるようなIRイベントの開催もいいですね。決算や財務情報、株価などの数字だけでは伝わらない、社員や経営陣の熱い思いをこの“Goldwin Voices”でもお伝えしていきますので、ぜひ今後もご覧いただけるとうれしいです」(金田)
金田武朗(かねだ・たけろう)
当社との接点は今から38年ほど前、新卒で入った総合商社繊維部門の担当として、渡辺貴生(現、代表取締役社長CEO)や本間永一郎(取締役副社長)と出会う。2020年に当社グローバル本部副本部長に就任。2022年、執行役員経営企画本部長に就任し、経営理念の実現、グループ経営および成長戦略の策定・推進を遂行。2024年、取締役常務執行役員総合企画本部長(現任)。
趣味は、ゴルフとセーリング。

記載内容・役職や所属は取材時点の情報です。
また、当記事は、株主・投資家の皆さまに当社をご理解いただくことを目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。