飛躍のため、大地をしっかり踏みしめる一年にGoldwin Voices

代表取締役社長CEO 渡辺貴生

2026.01.05

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

年頭にあたり、皆さまのご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げますとともに、
本年がさらなる飛躍の一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。


創業75周年の節目の2025年を終え、2026年がスタートしました。新年1本目のGoldwin Voicesは、エポックメイキングな出来事やモノづくりの哲学、そして現在から未来展望までーー。創業者である故・西田東作との思い出など、渡辺貴生(代表取締役社長CEO)のここでしか聞けない生の声をお届けします。

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「人と同じことはしない」2026年の挑戦

2026年、中期5ヵ年経営計画は3年目を迎える。渡辺の言葉はあくまでブレない。

「新年だからといって変わりませんが、2026年は2025年3月期にスタートした中期経営計画の2年が経過した、その時間をしっかりとかみ締め、同時に未来に向かう準備をするタイミング。頭にあるのは、地に足をつけて飛ぶための準備をするイメージです。お客さまとともに楽しみながら地球を守る、再生に挑戦するといった大きなテーマを掲げる会社として、自分が今立っている場所がどこなのか、そして飛ぶ場所はどこなのかを見定めていく。1年、2年と大地を踏みしめて進んでいけば、自然とその先が見えてくると考えています」

ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」は、サプライチェーンの強みを活かしながら、快適性や機能性といったブランドらしさを追求したフットウエアやバックパックなど、アパレル以外の新たな市場をより深く開拓していく。もちろん、「ザ・ノース・フェイス」だけではない。「ヘリーハンセン(HELLY HANSEN)」も「カンタベリー(canterbury)」も、「日本で私たちが持つ商標権を活かしきるために、まだまだやれることがある」と渡辺は言う。2025年、中国大陸を軸に出店を進めた「ゴールドウイン(Goldwin)」ブランドは2026年、イギリス・ロンドン、韓国・ソウル、アメリカ・ニューヨークシティなどでグローバル旗艦店をオープンする。各出店地域の特性や需要にあわせつつ、「繊細、丁寧、緻密、簡潔といった日本の美の源流、考え方をお客さまとのコミュニケーションに反映させて『ゴールドウイン』ブランドを根付かせる」(渡辺)。

2026年に挑戦することは何かと問うと、「人と同じことをしないこと」だと渡辺は即答した。これもまた、新年だからではなく、常日頃、渡辺が言っていることだ。

「『ゴールドウイン』ブランドは2033年3月期にグローバルでの売上高500億円を目指していますが、売上高500億円にすることが目的ではありません。これは1つの通過点としてのゴール設定で、その先には、製品を通してスポーツと生活を切り離すことなく、密接なものとして世界中の人々に感じてもらうことがある。製品だけではなく、2027年開業を目指して進めている自然体験施設『Play Earth Park Naturing Forest』で、スポーツの可能性を拡げ、自然と共に人間らしくある暮らしを感じてもらう。そのさらに先には、日本国内だけでなく、世界中のパートナーと組み、各地に自然体験施設を展開するといったことも考えられます。もちろんこれは、今はまだ構想段階の話ですが。

Play Earth Park Naturing Forestのイメージ図

ほかのスポーツブランドがやっていないことを我々がやることによって、自分たちのポジションがより明確になっていきます。自分たちがどのようなものになるつもりなのかをはっきりさせることで、なぜ、メーカーが自然体験施設をやるのかといったことを説明することなく、新しい挑戦のすべての意味が通るようになる。景観デザインの用語を使うと、『ビスタ』というのですが、すべてのことが1本の道のように見通せるようになると考えています」(渡辺)

「分断の時代」がもたらした気づき、感染症拡大禍で芽吹いた「PLAY EARTH」

2025年は、渡辺自身にとっても社長就任から5年という節目の年だった。2020年、まさに新型コロナウイルス感染症拡大に突入する年の社長就任からの5年間を渡辺は次のように振り返る。

「一時的な店舗閉鎖による影響で、売上高約60億円が蒸発したところからのスタートでした。余裕がないなか、一方で必ずパンデミックは収束し、そのあとは世界中から日本に人が来るようになる。そのための準備として店舗づくりに磨きをかけ、ローカルメジャー戦略を固めたうえで、世界に出てグローバルニッチを狙おうと考えていました。2020年当時に考えていたことは、3年間で進めることができました。結果、2024年、2025年と海外展開を加速し、今、中国大陸ではかなり手応えを感じています。

新型コロナウイルス感染症拡大での社会の分断を経て、人々が助け合う協調や協力の価値を再認識したからこそ、遊びや衣食住、学びや美といったさまざまな体験を通じて人と自然とのつながりを考えていく『Play Earth』プロジェクトも動き始めました。自然との共生をコンセプトにした『Play Earth Park Naturing Forest』は、日本と世界の人々がつながるきっかけとなる場所になるようにデザインしていきます。振り返れば、危機こそチャンスを生むきっかけだったのだと感じますね」(渡辺)

事業が好調であれば、現状維持に気持ちが傾いていたかもしれない。ただ渡辺の場合、社長に就任してから5年、厳しい環境だったからこそ、躊躇したり、曖昧にしがちなこともしっかり結論づけて前に進む覚悟が体に染みついた。

「転がる石には苔が生えぬということわざがありますが、つねに新しいことを見つけておもしろがる探究心は10代から66歳になる今も変わっていません。変わったのは時間の使い方でしょうか。よりスピード感を持って早くやる。転がる速度は早くなっていますね」(渡辺)

過去の積み重ねが生み出す、新しい価値と未来

「経営者としてのあるべき姿は、創業者である故・西田東作の背中から学んだ」と渡辺は話す。渡辺が高校生、大学生だった1970年代後半から1980年前半にかけて、当社は「フザルプ」「チャンピオン」「エレッセ」「ザ・ノース・フェイス」といった世界の名だたるブランドとのライセンス契約を結び、日本で販売していた。当時は、若者文化をリードする雑誌『POPEYE』(1976年創刊)がカリフォルニアのコンテンポラリーライフスタイルを日本に紹介し、スケートボード、サーフ、テニス、スキーが日常と地続きの文化として溶け込んでいた時代だ。当社は、「そうした新しいライフスタイルの象徴に映った」(渡辺)。

憧れのブランドを取り扱う当社に入社して4年目から30年以上、「ザ・ノース・フェイス」に携わり当社の主力ブランドに育てあげたが、「東作さんの応援があったから、今がある」と渡辺は言う。

「20代後半から30代にかけて、日本の『ザ・ノース・フェイス』をアメリカより良いものにしようという意気込みで開発に没頭していました。それが、事業部のマネージャーであった1999年、商標権を三井物産株式会社に一時的に売却することになった。ちょうどバブル崩壊後の景気低迷とスキーブームのピークアウトが重なった時期でした。そういった厳しいときに私は、これからはアウトドアだけでなく、都市で生活する人々が街着としてスポーツアパレルを取り入れるような新規事業を提案したいと東作さんに相談しました。このような経営状態のときに何を言い出すんだといった声もあがるなか東作さんは、堂々と胸を張ってやってみろ、心を込めてやれば結果につながっていくと言ってくれた。このときのうれしさは25年過ぎた今も忘れていません」(渡辺)

その後、2000年にザ・ノース・フェイス事業部長に就任し、事業の強化に注力することとなったため、当時立ち上げに向けて進んでいた新規事業は事業化には至らず、途中で中断することとなった。
ただ、このときの創業者が「若い者の考えを真剣に聞け」と背中を押してくれた経験は、渡辺の確かな燃料となり、今に続く店づくりを起点とした直営店ビジネスモデルの確立をいっきに推し進める原動力となった。2000年当時、長らく主要な流通チャネルであった百貨店やスポーツ用品販売店と競合となる直営店の展開は、もちろん反対の声も多かった。しかしながら、直営店でなければ、製品のクオリティをどれほど上げてもその良さをお客さまに伝えるには限界がある。ここから25年積み上げてきた、「ブランドの価値観を空間そのものとして発信する店舗運営ノウハウ」が、現在の海外展開にも生かされている。

旧「THE NORTH FACE 原宿」が2019年にリニューアルし、現在の「THE NORTH FACE Mountain」となった

「創業者が遺した言葉のひとつに、『翔ぶ意識、ロマンを求めよ』というものがあります。不可能だと思えることもとにかくやってみたら、周りが応援してくれて不可能を可能にする……そういった意味が込められている言葉だと私は受け止め、仕事の指針としてきました。今、東作さんが目の前にいたら、私は言葉通りのことができているのか、聞いてみたいですね。

1980年代の時点で東作さんは、やがて世界を制覇するぞという思いを持って取り組んでくれと言っていました。世界中の人々に当社がやっていることは必要なことだ、当社の事業によって暮らしが良くなった、楽しく生きられるようになったと思ってもらえるようになりたい。現在の売上比率では日本9割に対し海外1割弱ですが、ゆくゆくは日本と海外をバランスできるようになりたいと考えています」(渡辺)

2021年に中国大陸一号店としてオープンした「Goldwin Beijing」の内装

未来は過去の積み重ねで起こる。「数多くの体験こそが想像を生む」と渡辺は考える。

「未来は、やってくるのを待つのではなく、自らつくるもの。我々は新しいもの、新しい価値を絶え間なくつくり続ける会社でありたいと考えます。従業員一人ひとりが好きなスポーツを楽しみ、その楽しさを多くの人々に伝えようとしています。また、国内に約2,000人もの販売員がお客さまとのコミュニケーションを通して日々、体験を積み重ねています。その豊かな想像力から生み出される未来に、期待していただきたいと思います」(渡辺)

渡辺貴生(わたなべ・たかお)

代表取締役社長CEO
1960年生まれ。1982年、日本国内で「ザ・ノース・フェイス」を展開している会社であることを志望動機の1つに、ゴールドウインに入社。1985年から30年超、ザ・ノース・フェイス事業に携わり、主力事業に押し上げる一翼を担った。2005年、取締役執行役員ザ・ノース・フェイス事業部長、2010年、当社取締役常務執行役員事業統括本部副本部長兼アウトドアスタイル事業本部長兼ヘリーハンセン事業部長兼ダイレクトマーケティング推進部長、2017年、当社取締役副社長執行役員事業統括本部長を経て、2020年、代表取締役社長執行役員に就任。2025年から、代表取締役社長CEOとなり現職。地球環境の保全と未来を担う子どもたちへの支援に強い思いを持つ。1970年代に出会い「人生を変えてくれた『ザ・ノース・フェイス』のシエラパーカは捨てられない」と今も持ち続けている。

記載内容・役職や所属は取材時点の情報です。
また、当記事は、株主・投資家の皆さまに当社をご理解いただくことを目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。

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