
創業の地である富山県で開発を進める「Play Earth Park Naturing Forest(プレイアースパーク ネイチャーリング フォレスト)」。当社が掲げるパーパスにつながる「環境づくり」の、第一弾の取り組みです。モノづくり、コトづくりから環境づくりへーー。約40ヘクタールの広大なフィールドで四季折々の自然に触れ、地域の人々と交流し、子どもたちは初めての感覚を経験し、大人たちは新たな気づきを得る。訪れる誰もが自然と共生する価値を体感できる場所。「新しい価値が芽生える場をつくりたい」と話す株式会社PLAY EARTH PARKの代表取締役社長、木村宏が、その歩みと展望について語ります。
体験が価値になる
Play Earth Park Naturing Forestは「パークエリア」「フォレストエリア」「ガーデンエリア」という3つのエリアで構成され、全体のランドスケープデザインと6つの建築を、国内外の設計者8組が参画して開発を進めている。人と自然の新たな可能性を探求する、あらゆる人々の新たな原体験のための“ネイチャーパーク”だ。
「訪れる人が自ら考え、自由に遊べる場所です。ブランコや滑り台のように遊び方が決められた遊具ではなく、『どうやって遊ぼうか』と子どもたちが自由に創造できる場にしたい」と、木村はパークエリアについて説明する。 さらに、四季ごとに姿を変えるガーデンエリアも特徴的だ。1年を72の季節に分けて表す「七十二候」の考えに基づき設計されており、約5日間ごとに季節の移ろいを感じられる。
「南砺市の食文化や食べられる植物や暮らしに役立つ知恵を学べます。都会では失われがちな季節を感じる力を取り戻せるでしょう。水辺の遊びや山でのトレッキングなど、滞在するたびに新しい体験が待っている。春に来た人が『次は秋に来よう』と思ってくれる。そういった、リピートを生む仕掛けを考えています」 (木村)
農業体験や地域の“職人さんや専門家”によるワークショップなど、地元の人が主体的に関わるアクティビティも構想中だ。これにより来訪者と地域住民が交わり、地域資源を発掘し再評価、「地元の方々の誇りにつながることも期待している」と木村は話す。

地域と企業がともに歩む新たな拠点づくり
Play Earth Park Naturing Forestは、地域とともに成長することを大前提としている。
「農業体験や山林の案内など、地域の方々にも直接関わっていただくことで施設が生きてきます。地域の方々が誇りを持って魅力を発信できる場所にすることが大事だと考えます」(木村)
Play Earth Park Naturing Forestができる地域は、徳信の地であり厚い信仰に根ざした寺院群や、日本を代表する木彫り建築の瑞泉寺があり、民芸の精神が息づく土地だ。さらに、砺波平野に広がる散居村(田園のなかに屋敷林に囲まれた家屋が点在する集落形態)が季節ごとに違った独特の景観をつくる。
「自然や里山だけでなく、信仰や民芸といった生活に根付いた文化や歴史を感じながら過ごすことで、地元の人々の土地への愛着を訪れる人も共有できます」(木村)

地域にとっての観光施設の役割を考えるとき、「雇用を生み、消費を促す」ことはもちろん大事な視点だ。加えて木村は、「企業と地域がお互いに課題を解決し合う構造を作りたい」と強調する。
「成功の定義は一つではありません」と木村は言う。地域住民が「やってよかった」と思い、商店や農地が再生する。地域の文化・伝統・産業が次世代に継承される。さらに来訪者が二度三度と足を運び地域と継続的なつながりを持つ人が増える。それらの積み重ねが成功だと考える。そのためには、成果の検証を地域と共有することが欠かせない。
「難しい言葉ではなくとも、今、どの目標に近づいているかを一緒に語り合うことが信頼関係を築く土台になります」(木村)
ホテルから地域づくりへ
木村のキャリアはホテル業界から始まった。リゾート開発や海外展開に携わり、自治体と協力しながら新しい施設を立ち上げる経験を重ねてきた。ホテルや公共施設運営、観光人材育成など幅広い経験を持つ。
「旅行が好きでこの世界に入りました。土地を選定し、オーナーとタッグを組み、市町村と協働してリゾートを開発する。バブル期ならではの熱気ある現場でした」 (木村)
その後、自ら学生時代に通った長野県の宿を引き継ぎ、ペンション運営を行なった。そのペンションがある地域から依頼を受けて公共施設の立ち上げや再生、温浴施設、道の駅のリニューアルに挑戦。観光資源を活かしながら、地域住民が誇りを持って地元をPRできるような仕組みづくりに力を注いだ。「都市と農村の交流を演出し、地域資源をアクティビティ商品に変える。振り返ってみると、『Play Earth Park Naturing Forest』の“小さな原型”をつくり続けてきました」と木村は笑う。

観光と自然保全の両立を目指す拠点
信州の活動に一区切りをつけ、2015年から北海道大学大学院で観光研究や人材育成に携わり、ロングトレイルの普及など観光と自然保全を両立する活動を進めてきた木村。その経験が当社の理念と結びついた。
「エコビレッジ構想という言葉があります。環境負荷を最小限に抑え、持続可能な社会を目指す新しいまちづくりのコンセプトです。『Play Earth Park Naturing Forest』ができる富山県南砺市では、環境やエネルギー、農業や林業など、さまざまな事柄が連携、連動しながら人づくりを進め、次代を担う子どもたちが安心して、地域に誇りを持ちながら暮らし続けるために、このエコビレッジ構想を策定しています。ここに、ゴールドウインの“人間と自然の共生”という考え方が加わったとき、南砺市・桜ヶ池というフィールドで、地域と企業の力を合わせてこれまで以上のことが実現できると感じました」 (木村)

「Play Earth Park Naturing Forest」は、単なる“テーマパーク”ではない。人口減少や里山の生態系崩壊といった課題に向き合いながら、外部から人を呼び込み、地域に関心を持つ人を増やし、新たな人の流れを生み出す社会実験の場でもある。ゴールドウインが掲げる「人間と自然の共生」という理念と、木村が長年抱いてきた「持続可能な地域づくり」の思いは、南砺市・桜ヶ池の地で重なった。「地域の理解と協力なくして、この構想は実現できません。だからこそ共生の姿勢が欠かせない」と木村は言う。

組織づくりに欠かせない視点
株式会社PLAY EARTH PARK の現在のスタッフは25人規模だが、開業までの2年で100人以上に拡大する計画だ。地域住民だけでなく移住者もいるため、古民家再生も含めた住環境整備などで、自治体や地元不動産会社との連携も進めている。
「従業員自身が豊かに暮らし、楽しんで働けること、地域に愛着を持つことがホスピタリティにつながり、お客さまの体験に直結すると考えます」 (木村)
また、ゴールドウインのモノづくり精神と観光の知見が交わることで、新しい発想も生まれている。
「富山本店で生産に携わっている従業員、『ゴールドウイン テック・ラボ』で研究開発に当たる従業員など、異なるバックグラウンドを持つ人々が集まり議論することで、既存の枠を越えたこれまでにないアイデアが出ています。モノづくりを追求してきた人にとっても、観光、コトづくりを追求してきた私にとっても、お客さまに喜んでもらいたい、おもしろいことをしたいと思う気持ちは同じ。モノづくりの会社が培ってきた真面目さや創意工夫の精神は、コトづくりにも通じるんですね。観光視点からだけでは見えなかったことが見えてきて、新しいものが生まれる。これはゴールドウインならではの強みだと感じています」 (木村)
今後の展望——社会的インパクトを企業価値へ
2025年春に「Play Earth Park Naturing Forest」の構想を発表すると、建築家や地域経済関係者から大きな注目をいただきました。「これまでにない、まったく新しいものができる、観光の拠点になると期待していただいているのを感じます。雑誌や新聞等メディアの取材やソーシャルメディアのフォロワーも増えています。ただ、期待値に見合う成果を出せるか、つねに緊張感を持って進めています」(木村)

今後の最大の課題は持続的な運営基盤の確立だ。自然遊びのためのウエアやギアを取り扱うゴールドウイン社のブランドショップを併設し、南砺の食文化を楽しむための食品を取り揃えたショップによる収益確保を図るほか、将来的には研修棟やギャラリーの建設も視野に入れている。
「短期的には過大投資に見えるかもしれませんが、持続可能な運営のために収益性を担保しつつ進める一方で、社会的インパクトの大きい場としての存在感を示していきたい。『Play Earth Park Naturing Forest』でどういった取り組みをすれば社会的インパクトが生まれ、どのような波及効果があり、どういった価値を生み出すのか。そのノウハウを体系化してゴールドウイン全体に還元し、社会的インパクトを企業価値に結びつけていくことが重要だと考えています」(木村)
目指すは、社会的意義と持続的な運営基盤両立。「Play Earth Park Naturing Forest」は、ゴールドウインの「環境づくり」「コトづくり」「モノづくり」を統合する象徴的な拠点になる。社会的意義と持続性の両立は容易ではないが、「子どもたちの未来に残せる場所をつくるという想いがその挑戦を支える」と木村は言う。
「地域とともに歩む姿勢を持ち続け、地域とともに発展し、社会的価値と企業価値を同時に高める。『Play Earth Park Naturing Forest』は、その未来を実現するための拠点です」 (木村)
木村 宏 (きむら・ひろし)
株式会社PLAY EARTH PARK 代表取締役社長
1961年生まれ。大学卒業後、リゾート開発、ホテル経営会社の勤務を経て、長野県に移住。宿泊施設を経営したのち、長野県飯山市のグリーンツーリズム事業に参画。体験型宿泊施設の立ち上げ、温浴施設、道の駅、アートミュージアム、郷土料理店などの公共施設運営、着地型商品の造成、観光まちづくり事業を推進し、新幹線飯山駅構内の観光交流拠点整備にも関わる。国内各地のロングトレイルの普及活動にも従事。2015年10月、株式会社小布施堂に常務取締役に就任し、飲食・宿泊施設のリニューアルを推進。2015年12月には北海道大学大学院観光学高等研究センターに着任し、2020年4月には同センターの教授に就任。2023年より客員教授(現職)。2023年4月から、株式会社PLAY EARTH PARKの代表取締役社長(現職)を務める。趣味は日光浴で、何にも考えず浜辺で寝っ転がって読書するのが好き。トレッキングは日頃のストレス解消に最適と思い、日常的に出かける 。

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