
機能美を追求し素材からこだわり抜いた「モノづくり」で事業を拡大してきた当社は今、「コトづくり」そして「環境づくり」へ、人間も自然もより豊かになる可能性を探求し始めています。「環境づくり」に向けた取り組みの第一弾として、2027年初夏オープンを目指し、創業の地である富山県で開発を進める「Play Earth Park Naturing Forest」。その現場でゼロから場づくりにあたる、株式会社PLAY EARTH PARKの専務取締役・野村一哉と取締役事業本部長 兼 管理部長・斎藤洋史の2人が今の想いや葛藤、手応えを語る前後編。
前編は、2人のキャリアや価値観を軸に、「Play Earth Park Naturing Forest」の本質に迫ります。
体験、気づきから具体的なアクションへ
親子が山に登ったり、川でフライフィッシングをしたり、家族や地域の人々を巻き込みながら子どもが自然のなかで遊び、学ぶーー。今から5年ほど前の2021年5月の決算説明会で「Play Earth Park Naturing Forest」のコンセプトムービーを見た瞬間「映像の親子の姿が自分と重なった」と、株式会社PLAY EARTH PARKの専務取締役・野村一哉は言う。
「息子2人を連れて登山したり、フライフィッシングをしたり、幼少期から子どもたちにはアウトドアスポーツを体験させてきました。映像に出てきた親子の姿は、まさに自分がやってきたことでした。35年ほどフライフィッシングをしていて、実感しているのが生態系の変化です。渓流や湖で行うフライフィッシングはカゲロウなどの水生昆虫の生態と深く関わっています。どのような虫が、いつ、どこにいるのか。そこで餌になっているものを模して毛鉤をつくります。でも水温が変わったり水質が悪化すると、そこにいたはずの昆虫がいなくなってしまう。各地のフィールドで魚の生態系が変わってきているのを実感します。
山を登るときにも、秋や春の景色を見られる時間がどんどん短くなり、蒸し暑い夏と突然の豪雪に見舞われる冬、四季ではなく“二季”になっていることを肌感覚で知る……。こうした環境変化を、趣味を通じてダイレクトに感じているからこそ、これはまずい、何かアクションを起こさなければと考えてきました。だから、ゴールドウインが目指している環境づくりはすぐに腹落ちしました。『Play Earth Park Naturing Forest』の取り組みには意義があると強く思いますし、素直に誇らしく感じています」(野村)

一方で、株式会社PLAY EARTH PARK 取締役事業本部長 兼 管理部長の斎藤洋史氏は、「Play Earth Park Naturing Forest」のプロジェクトは「自分がずっと描いてきた未来の具体化」だと語る。
「2020年、ゴールドウインの次世代リーダー育成研修で一人ひとりが“次のゴールドウインの姿”を提案する機会がありました。そのとき私は、モノづくり企業として自社の価値観を体験してもらえる場をつくるべきだ、とプレゼンしたのを覚えています。だから『Play Earth Park Naturing Forest』の構想を聞いてすぐに『あ、これだ』と。会社がそこに踏み出してくれたんだ、といううれしい感覚でした」(斎藤)

野村と斎藤が属する株式会社PLAY EARTH PARKは、長期ビジョン「PLAY EARTH 2030」における重点課題、気候変動問題の解決と持続可能なビジネスの再構築に向き合い、スポーツを通じて豊かで健やかな暮らしを実現することを目的に2023年に設立されたゴールドウインの100%子会社だ。人と自然がつながり想像力を刺激しあえる場をつくることで、その課題解決に向かうーー。この株式会社PLAY EARTH PARKがまず着手するのが、「Play Earth Park Naturing Forest」の開発と運営だ。
子どもにとっては初めての感覚を経験する場であり、大人にとっては新たな気づきを感じる場。そういった場づくりをすることで、「環境を良くしていくために自分は何ができるのかを考え、具体的なアクションを起こせる人々が増えていって欲しい」と野村は話す。
モノづくりから環境づくりの最前線へ
野村は1990年ゴールドウインに入社し、営業からキャリアをスタートした。その後もアウトドア事業領域で直営店運営や百貨店での売り場づくりなど、30年以上にわたって販売の現場に向き合ってきたプロパー社員だ。
「入社したころはスキー領域が事業の柱。スキーブームの1990年代は、仙台営業所で7年ほど経験を積みました。百貨店の子ども服売り場に『ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)』のショップをつくるとき、百貨店の担当者の方から『ライバルはどこですか?』と聞かれて、『ゲーム業界です』と答えたことがありました。家でゲームをして過ごすのではなく、子どもたちを外に連れ出して遊ばせたいという思いはそのころから強いんですよ」(野村)
実際に、百貨店と連携し山に子どもたちを連れ出すイベントを数多く企画するなど、販売の現場でコトづくりにも積極的に取り組んできた。
「私自身、子どものころから親に連れられて登山や釣りに行っていました。自分の子どもたちにも、スキーや登山、釣りなどの外遊びをさせてきました。親世代から子ども世代へと自然体験が受け継がれる感覚が、実体験として染み付いています。その原点が、『Play Earth Park Naturing Forest』の事業を進めるうえでも影響を与えているような気がします」(野村)

対照的に、2006年ゴールドウイン入社の斎藤は管理本部・財務部からキャリアをスタートしている。
「中学校から14年間ソフトテニスをやっていたこともあり、入社前から希望していたのはアスレチックブランドの事業部でした。財務部に配属された当初は、まったくの畑違いだと感じたものの、振り返ると財務部に所属した6年間が今の自分のベースを形作っていると感じます。『この数字のまま進むと、事業が成り立たなくなる可能性がある』『このように改善すれば、事業全体がよくなる』といった感覚を、自分の中にしっかり根づかせてくれました」(斎藤)
その後、2014年から2021年までの7年間ほどはスイムウエアブランド「スピード(Speedo)」の事業へ。競泳用の高速水着やゴーグルやキャップは本国イギリスから仕入れて販売、アパレルや水着を自社で企画・生産・販売もする。輸入販売代理店とメーカー両方のビジネスモデルを経験したことが、斎藤の大きな糧になった。
「半分は、仕入れ商材の競泳用の高速水着を販売するディストリビューターとしての視点。もう半分は、原価構造を考えてターゲットを設定し、製品を企画、生産して販売するメーカーとしての視点。この両方を経験できました。しかも、スピード事業部の部長を引き継いだタイミングは新型コロナウイルス感染症拡大の最中。決して順風満帆ではなかったからこそ、『どうやって改善していくか』を真正面から考え続けることができました」(斎藤)
斎藤は、スイムウエアの印象が強い「スピード」を水中や水の周辺におけるライフスタイル領域にまで広げ、ブランドを再構築した実績を持つ。
自然と人との関係性を問い直す場へ
「Play Earth Park Naturing Forest」プロジェクトの最前線に立つ2人に、その将来像を問うと、野村氏はまず「続けることの重要性」を強調した。
「何より大切なのは、長く続けることです。そのためには、ターゲットの中心は子どもですが、親御さんや地域の方々にも興味を持ってもらい、その価値を理解し、愛着を持ってもらえる場にすること。建築物などハード面をつくって終わりではなく、お客さまの声や自分たちのアイデアでつねにアップデートしていくこと。アクティビティーだけでなく、ワークショップや店舗運営、提供する食べ物、サービスを提供するスタッフ……あらゆるソフト面を進化させ続けることが、長く続くための必要条件だと考えています」(野村)
その先には、日本各地への展開の夢も描く。
「これは個人的に思い描いていることですが……富山県できちんと根づけば、自然環境や文化の異なる他の地域からも、『一緒にやりたい』という声をいただけるかもしれません。もしそうなれば、海のそばの場所、湖がシンボルの場所、山のロケーション…フィールドが変われば、パークの姿も変わる。地域ごとの特色がにじむようなパークが広がることで、地域活性の一助となれるのではないかと考えています」(野村氏)

一方で斎藤は、その将来像を「自然と人との関係性を問い直す場」としてとらえている。
「個人的には、人間も自然の一部であるということを、もっとナチュラルに理解できる社会になるといいなと感じています。都市にいても地方にいても、自然は人の人生に彩りを与えてくれる存在です。子どもたちを中心にものごとを見ていくと、人と自然の関係、人と人の関係が、もう少しニュートラルでポジティブな方向に変わっていくような気がしているんですね。
都市部に人口が集中し地域の過疎化が進む現状があります。地域の利便性を高める名目で、新設された施設が地域の雰囲気に馴染まず、その土地ならではの自然や文化が見えにくくなってしまうケースも少なくありません。地元の人々にとっては当たり前の地域の自然や食べ物、文化を感じられる場は、『自分たちが住んでいる地域っていいところだな』と地元の方々が再認識したり、そこに住みたいと感じる人が増えたりすることにつながるかもしれません。都市部に住むことだけが正解ではない、東京には東京の良さがあり、富山には富山の良さがある、ということに気づくきっかけになるといいなと思います」(斎藤)
スポーツアパレルメーカーとして、創業から76年続いてきた当社がこの先も100年、150年と続いていくなかで、「生活者の暮らしに必要とされる存在であり続けるため、『Play Earth Park Naturing Forest』をつくりあげていきたい」と斎藤は意気込む。
「『Play Earth Park Naturing Forest』を訪れる親子のなかには、初めてゴールドウインという会社を知るという人も出てくるでしょうし、もしかすると、『将来この会社で働きたい』と思ってくれる子どもたちも出てくるかもしれませんよね。この事業の成果は、子どもたちの成長の過程で一つひとつ実を結んでいくものだと思います。ゴールドウインが掲げる環境づくりへの姿勢を目に見える形で示したい」(斎藤)
野村も続ける。
「『将来の日本、世界をになう子どもたちを、みんなで応援しよう』という長期目線で、この事業に関心を持っていただけたらうれしいです」(野村)
続きの後編「『原体験』から子どもたちの未来をつくる、『Play Earth Park Naturing Forest』が描く長い時間軸」では、「蛾のワークショップ」など具体的なプログラムや場づくりの現場にフォーカスしながら、ゼロイチで「Play Earth Park Naturing Forest」をつくる2人の葛藤と手応えを掘り下げていきます。
野村一哉(のむら・かずや)
1966年生まれ。1990年当社入社、1991年仙台営業所スキー販売部を経て、2002年第一営業本部ゴールドウイン事業部販売グループ、2004年コールマン事業部販売グループ、2007年アウトドア販売本部販売一部大阪百貨店販売リーダー、2009年東京百貨店販売リーダー、2014年事業統括本部販売一部部長、2021年事業本部副本部長兼PLAY EARTH PARK推進室室長、2024年グローバルブランド事業本部副本部長兼PLAY EARTH PARK専務取締役、2026年総合企画本部副本部長 兼 PLAY EARTH PARK専務取締役(現任)
休日は、約35年間続けているフライフィッシングを楽しんだり、妻を誘って登山に行く。小学校、中学校、大学と野球部に所属。

斎藤洋史(さいとう・ひろし)
1983年生まれ。2006年当社入社、管理本部財務部財務グループを経て、2013年事業統括本部事業管理室事業管理チーム、2014年スピード事業部事業グループ事業チーム、2019年事業統括本部事業本部スピード事業部事業グループ事業チームリーダー、2020年第二事業本部スピード事業部事業グループマネージャー、2021年事業本部スピード事業部部長、2022年事業本部 PLAY EARTH 事業部部長、2024年 PLAY EARTH PARK 取締役事業本部長 兼 管理部長(現任)
中学校から社会人まで約14年間ソフトテニスをやってきた。趣味はガーデニングで、週末は観葉植物や庭の手入れをしながら、季節ごとの花々の香り、そこに来る虫の変化などを生活の彩りとして楽しむ。

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