箱根町×ゴールドウイン 包括連携協定から生まれた「キッズサマーキャンプ2026」― キャンプを支える3人が語る、自然体験が育む子どもたちの未来 ―News

2026.10.28

株式会社ゴールドウイン(本社:東京都港区/代表取締役社長CEO:渡辺 貴生)は、箱根町との包括連携協定にもとづき、2022年より小学3年生から6年生を対象とした「箱根町×ゴールドウイン キッズサマーキャンプ」に協賛しています。

富士箱根伊豆国立公園・芦ノ湖エリアを舞台に、キャンプやハイキング、星空教室、箱根寄木細工体験など、2泊3日を通して多彩なプログラムを実施。子どもたちが自然に親しみ、さまざまな体験から新たな発見や学びを得る機会をつくってきました。

初年度からキャンプに関わるプロスキーヤー・冒険家の三浦豪太さん、箱根町を拠点に活動するマウンテンガイドの金子森さん、そして当社 PlayEarth推進室の川西大河の3人に、取り組みの始まりと、自然体験が育む子どもたちの未来について聞きました。

〈プロフィール〉

三浦 豪太/プロスキーヤー、博士(医学)Ph.D

1969年、神奈川県鎌倉市生まれ。三浦ファミリーとして11歳でキリマンジャロを最年少登頂。’91年よりフリースタイルスキー・モーグル競技へ転向し、長野オリンピック13位、ワールドカップ5位入賞など日本モーグル界を牽引。2003年、父・三浦雄一郎とともにエベレスト(8,848m)登頂、初の日本人親子同時登頂記録を達成。2013年に2度目の登頂。現在は子どもから高齢者まで幅広い層に向けたトレーニングおよびアウトドアプログラムを国内外で数多く手がける。キッズサマーキャンプには初年度から参加。

金子 森/ゴールドウインマウンテンガイド、全国通訳案内士 、野外・災害救命救急法WFA

米国・南カリフォルニア大学卒業後、都内での勤務を経て30歳を期に地元である箱根にUターン。2015年より訪日外国人向け専門ガイド・Explore Hakoneを始動し、1日1組限定のプライベートツアーとして、欧米豪を中心にこれまで世界33ヵ国、1,200組以上のガイド実績。箱根町の担当者として、初年度からキャンプの企画・運営に携わる。芦之湖漁業協同組合、箱根DMO(箱根観光協会)、地元の施設やガイドなど、町内の関係者をつなぐ役割を担う。

西 大河/株式会社ゴールドウイン PlayEarth推進室

PlayEarth推進室にて、箱根町との包括連携協定にまつわる取り組みを担当。キッズサマーキャンプには2年目から参加している。

地域の人たちと共につくる体験。

― どのような経緯で箱根町とのキッズキャンプは生まれたのでしょうか。

金子 はじまりは、箱根町とゴールドウインが結んだ包括連携協定です。箱根はこれだけ自然が豊かなのに、子どもたちが自然に触れる機会は意外と少ない。町内の学校の規模もそれほど大きくないので、外のことも知ってもらいたいと思っていました。ゴールドウインには、豪太さんをはじめ、契約されているアスリートの方や自然に関わる方がたくさんいますよね。そういう方々に、箱根の子どもたちを会わせたいというのがきっかけでした。

川西 参加者は最初から、箱根町内と町外の子どもが半分ずつでしたよね。

金子 そうですね。箱根の子たちに、外の子とコミュニケーションをとってほしいというちょっとした親心もあって。初年度は町内10人・町外10人くらいでした。

三浦 初年度は大雨で、ほとんど何もできませんでしたよね。なかなかエクストリームな始まりだったのを覚えています。

金子 しかも、新型コロナウイルス感染症が拡大していた頃で、テントは一人一張り。夜中に浸水した子もいて、途中からホールへ移動したりして。

三浦 僕はその頃、まだ初日に話をしたらホテルに泊まって翌日帰るという参加の仕方だったんですが、ホテルでザーッという雨音を聞きながら「子どもたち、テントで寝ているんだよな」って(笑)。でもやっぱり、その経験も含めて現地で一緒に参加した方が面白そうだなと思い、次の年から前日入りでキャンプするようになりました。

川西 そんな過酷な状況だったのに、初年度に参加した子が翌年もたくさん戻ってきてくれて。雨で予定通りにできなかったことも含めて、心に残る体験になったのかもしれません。そこから毎年、子どもたちの様子をみながらキャンプの内容を組み立てていきました。芦ノ湖での水難訓練は豪太さんのアイデアでしたよね。

三浦 僕が、「せっかく湖が目の前にあるんだから、入りたい」と言ったんです。でも、芦ノ湖はそもそも遊泳禁止で。

金子 そこで地元の漁業協同組合にまずは相談しました。漁協さんがその後に消防や警察などにも交渉してくれて、翌年に『水辺の安全講習』という形で実現しました。今年のプログラムに遊泳はありませんが、【芦ノ湖】探究・安全教室として、養魚場の見学や、ライフジャケットの正しい着用講座も組み込んでいます。

川西 養魚場の見学は、金子さんと地域の方々のつながりがあってこそのプログラムですよね。

金子 箱根町の小学校では、5年生がヒメマスのお腹を裂いて卵を出して、それを受精させた稚魚を漁協が育て、その子たちが6年生になったときに新1年生と一緒に放流する、という活動をずっと続けているんです。魚の命をいただくことも、その命が次へつながっていくことも、子どもたちは自らの体験で学んでいます。

三浦 地域がずっと子どもたちに手渡してきた営みなんですね。

金子 包括連携協定を結んでから、ゴールドウインの社員の方が延べ数百人、箱根に来てくださっています。登山道整備やゴールドウインの契約アスリートなどを招いたイベントなど、キャンプ以外の活動でも、何度も足を運んでくれているんです。外から来た企業が、地域にある関係の中へ入り、一緒に手を動かし続けてくれる。その信頼があるから箱根町からもさまざまな提案ができて、子どもたちの体験の幅も広がっていきます。

川西 僕自身も箱根にはもう10回以上来ているのですが、地域の方々が築いてきた関係の輪の中に、少しずつ入れていただいている感覚があります。

自然とのあいだに生まれる「遊び」

― キャンプ 5年目を迎え、子どもたちの姿にはどんな変化を感じていますか。

川西 最初の頃はスタッフがテントの張り方や調理の仕方など一つひとつ教えて、ずっとそばについている場面が多かったんです。でも今は、キャンプを経験したことのある子が初参加の子に教えたり、子どもたちだけで考えて動いたりする姿が目に見えて増えてきました。

三浦 このキャンプの対象は小学3年生から6年生のお子さんで、今年は中学生参加者(ジュニアリーダー)として2人が参加してくれています。そのうちの一人であるSくんは初年度から参加しているのですが、最初は友達が誰もいなくて、みんなの輪から離れて一人で虫を探していることが多い子でした。でもしばらくすると、Sくんの昆虫に対する知識がすごいあまりに、ほかの子たちがバーッと集まってくるようになったんですよね。年々、彼自身の周囲に対する変化も感じられるし、今日なんて周りの子たちがSくんに抱きついているのを見て嬉しかったな。

金子 以前は「虫を捕りたいから、食事を作るのは手伝わないよ」というスタンスだったのに、今日はご飯の火の番をしていましたよね。 初めて参加する小学3年生の男の子たちのそばに、どんとついていてくれて。何かを仕切るわけではないけれど、いると安心する“兄貴”みたいな感じで。

川西 Sくんにこのキャンプのどんなところが楽しいのかと聞いたら、「遊び」って答えたんです。何か一つのプログラムではなく、3日間を丸ごと遊びとして捉えているんですよね。

三浦 そうそう。遊びって、本来は子どもたちが勝手につくっていくものだと思うんです。ここにはスマートフォンもゲームもないけれど、気がつけば鬼ごっこをしているし、蝉の観察をしている。僕がペグを投げて丸太の的に刺していたら寄ってきて、一緒に投げ始める。そのあたりの草をじっと見ていたら、また「何してるの?」と聞いてくるから「これはヨモギだよ」「こっちはミントだよ」って、一緒に食べてみる。そんなふうに、いくらでも遊べちゃうんです。

金子 ヨモギをカレーに入れてみようとか、隠し味を考えている班もありましたよね。大人に言われた通りにつくるのではなくて、自分たちなりの面白さを見つけている。

三浦 大人が全部決めないことが、すごく大事なんだと思います。危ないことや悪いことはきちんと伝える。そのうえで、なるべく自由にする。キチキチ決めすぎないから、子どもたちの中にある遊ぶ力が出てくるんじゃないかと。いまは人間よりもAIの方が、論理的な思考やデータの量では圧倒的に速く答えを出しますよね。でも結局、感覚を伴っていないものは人の成長に繋がらないんじゃないかと思うんです。空を見て今日の天気を予測する。道端の草を見て食べられるかと考える。暑さや匂い、土の感触を受け取る。自然の中で五感を働かせて外の世界とつながることは、今後ますます大切になるのではないでしょうか。

川西 子ども同士のコミュニケーションを見ていても、箱根町の子と町外の子も、経験者と初参加の子も、大人が「もっと話してごらん」と言わなくても、テントを張ったり、料理をしたりするうちに溶け合っていきますよね。こちらが関係をつくるのではなく、関係が生まれる余白を用意する。それが、このキャンプらしさなのかもしれません。

小さな役割が、子どもたちの自信に変わる

― 自然の中で多様な人と過ごす3日間は、子どもたちにどんなことをもたらすのでしょうか。

三浦 自然の中に身を置くことはもちろん、3日間親と離れて過ごす時間も価値があるよね。

金子 いまは家庭と学校以外の大人に出会う機会が少ないから、普段は会わないような大人と話せることもいい経験だなと思います。運営スタッフ、漁業協同組合の方、星空教室や寄木細工の先生などなど。子どもたち、豪太さんに「エベレストに登ったの、すげえ」って素直に驚いたと思ったら、「ゴンちゃん、次はいつ行くの?」と友達のように聞いていましたね。

三浦 そのあと「ゴンちゃん、太った」とも言われましたけどね(笑)。本当に正直です。

金子 尊敬しているけれど、遠い人ではない。その親しみやすさが、子どもたちにはちょうどいいんだと思います。

三浦 以前、逗子で「ZUSHI TO MOUNTAIN」という企画をやったことがあって。子どもたちが逗子からカヌーを漕いで小田原に着いて、そこから歩いて外輪山を越え、金時山に登り、丹沢を回って、最終的に富士山を目指す。週末ごとに分けて、全部で150kmくらいかな。そのとき、トレイルランナーやアスリートをサポートする仕事の方、カメラマン、キノコ博士も一緒に来てくれたんです。そうしたら、その日からトレイルランニングを始める子、キノコの知識に興味を持つ子、アスリートをサポートする仕事に憧れる子が出てきて。同じゴールを目指していても、そこで感じる子たちの感性がバラバラだったんです。大人が押しつけるのではなく、子どもたちが勝手に解釈してくれていた。だから大人は、少し過酷な環境を一つ用意して、そのサポートに入るだけでいいんだなと思いました。

川西 キッズキャンプでも、子どもたちが自ら居場所や役割を見つけていく場面によく出会います。小学4年生からキャンプに参加してくれている中学1年生のHさんが、今年ジュニアリーダーとして本部で動いているのを見たときは、ちょっと胸が熱くなりました。もう親目線ですよね(笑)。

三浦 何がその子の“一歩”になるかは、大人にはわからないですからね。虫を追いかけたことかもしれないし、勇気を出して友だちに声をかけたことかもしれない。でも、子どもたちはそれぞれに何かを見つけて、持ち帰っていく。そうした小さな経験が、次の一歩につながるのだと思います。

金子 そうですね。感じ方は人それぞれだけど、何かしらの自信を持って帰路につくのは確か。その成長を親が見ているというのは、毎年の保護者アンケートを見ても、みんなに共通しているような気がします。

― 箱根というフィールドの魅力は。

三浦 僕は、箱根に来ること自体をいつも楽しみにしているんです。とくに一周約50kmの外輪山は、尾根をたどると、その先に富士山が感じられる。都心にこれだけ近いのに、1,000メートルを超える山があって、大涌谷からは噴煙が上がり、その真ん中に芦ノ湖があって。これだけ不思議で力のある風景が集まっているのは、まさに『自然のワンダー』ですよ。

金子 箱根というと、どうしても温泉や観光地の印象が強いですが、水は澄んでいるし、山も深い。外輪山を歩くと、観光だけでは見えにくい箱根の姿があります。身近な場所にこれだけ豊かな自然があることを、地域の子どもたちにも、外から来た子どもたちにも知ってほしいですね。地域だけでは気づきにくい魅力を、豪太さんやゴールドウインの視点が掘り起こしてくれる。それも、地域と企業が一緒に取り組む意味だと思っています。

三浦 箱根の山を歩いていると、手の届くところにトリカブトやバイケイソウといった毒のある草もあるんですよね。わずかな量でも命を落とすものもあれば、食べられておいしいものもある。それが、まさに自然です。生きる、生かされる。強い自然ばかりに憧れると、その人の思いだけになってしまうけれど、子どもたちには、手に触れられる自然を大切にしてもらいたいと思っています。

僕はエベレストに登ることと、ここで3日間キャンプをすることは、根っこの部分では変わらないと思っています。自然の中で寝て、食べることを考えて、今日やることに集中する。この経験が、いつか自分で『やりたい』と思うことに出会ったときの小さな自信になってくれれば嬉しい。まずは、こういう手の届く自然を面白がることから“一歩”は始まるんだと思います。

「箱根町×ゴールドウイン キッズサマーキャンプ2026」
主催:株式会社SOTOLABO
協賛・企画・運営協力:株式会社ゴールドウイン

取材・執筆:黒澤 祐美
写真:表 萌々花

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